診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
ヒルガオ科サツマイモ属のアサガオ類は古くから観賞植物としても親しまれてきたが、近年になってその野生種が道端、空き地さらには大豆畑や飼料畑などで雑草化して問題となっている。それらのほとんどは明治以降にわが国に入ってきた帰化種で、観賞用に導入されたものが逸脱し野生化したものもある。多くは畜産飼料用の輸入穀物に混入していた種子が家畜の消化器官で消化されないまま堆肥中に残り、それが田畑に施用されることで広がったと考えられている。畑地ではアメリカアサガオ、マルバアメリカアサガオ、マルバアサガオ、ホシアサガオ、マメアサガオ、マルバルコウなどの発生が確認され、特に大豆作で発生するこれらの帰化アサガオは慣行の除草剤が効きにくいため問題雑草となっている。
いずれもつる性の一年生雑草である。アメリカアサガオ、マルバアメリカアサガオは熱帯アメリカ原産であり、アメリカアサガオの葉が3~5に分裂するのに対し、マルバアメリカアサガオは葉が分裂しない変種で、その他の特徴はアメリカアサガオと変わらない。子葉の切れ込みは小さく丸みを帯びる。花は直径3~4cmのロート型でほぼ円形、花色は赤~青色と様々である。マルバアサガオも熱帯アメリカ原産で、葉の形はマルバアメリカアサガオに似るが、果実が極端に下向きに垂れる点で区別できる。花は直径は5~8cmで紅色から青色、白色まで変化に富む。ホシアサガオは熱帯アメリカ原産。子葉は切れ込みが深くとがっている。葉は先がとがったハート型で、花は直径2cmほどのピンク色で中心の色が濃く、5角形のロート型である。マメアサガオは北アメリカ原産である。子葉は切れ込みが深くとがり、葉は先がとがったハート型が多いが、3裂するものもあり、形が変わりやすい。花は直径1.5cmほどの白色、まれにピンク色で5角形のロート型である。マルバルコウは熱帯アメリカ原産。子葉は切れ込みが小さく丸みを帯びる。葉はハート型で1~2の角がある。花は直径1.5~2cmのオレンジ色で5角形のロート型である。
畑地に発生する帰化アサガオは東北以南で発生が確認され、特に関東以西で多くみられる。種子・幼植物のサイズが大きく、出芽可能深度が深いことから発生期間が長く、土壌処理剤が効きにくい。大豆作では作物にからみつくことで生育の邪魔になったり、収穫時に茎葉の汁が大豆につくことで汚粒が発生したり、種子が混入することで収穫物の品質が低下したりするなどさまざまな問題を引き起こす。種子の寿命は長く、水稲作との輪作を行っても種子が完全には死滅しないことも防除を難しくしている。
刈り払いや除草剤による防除が中心となる。畑地では一度侵入すると防除が困難なため、侵入、定着を防ぐことが大切である。アサガオ類は多くの場合が圃場周辺から圃場内に入り込むため、非選択性茎葉処理剤を株元まで散布することや、地際からの刈り払い、少量であれば抜き取るなど、圃場周辺の防除を徹底する。いずれも、開花・結実前に防除することが重要であり、開花時以降に刈り取ったアサガオ類の茎葉部は、種子の後熟を防ぐためそのまま放置せず適切に処分する。
大豆作では雑草防除の中心が土壌処理剤であるが、アサガオ類には土壌処理剤のみでの防除は難しく、大豆生育期の茎葉処理剤や中耕・培土との組み合わせ防除が必要である。畦幅と大豆草丈の比が“1”になると、それ以降に発生したアサガオは大豆の被陰により正常に生育できないとされていることから、その時期までを目安に防除を徹底する。また、アサガオ類が発生している圃場の収穫を最後に行うことで機械の移動による他の圃場への拡散を防ぐことや、アサガオ類の種子が混入した屑大豆を圃場に戻さないことも重要である。
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