診断のための特徴的な写真を掲載し、被害、発生、防除、薬剤(農薬)について簡潔に解説しています。
本病はオオムギとコムギに発生するが、それぞれ病原菌が異なる。罹病株は健全株に比較して分げつがやや増加するとともに、草丈は低くなる。オオムギの罹病穂は退色し、芒が早く枯れて白くなる。登熟するにしたがって穎は開いて茶褐色球形の子実が露出する。コムギの場合、健全穂に比して罹病穂はやや小さく、成熟期になっても暗緑色を呈し、芒が変形することが多い。罹病穂の子実の内部には黒褐色の粉末状の胞子が充満しており、つぶすと腐敗した魚のような特有のなまぐさい臭いを放つ。
本病は糸状菌の一種によって引き起こされ、主に種子伝染により発病する。コムギの場合、感染は発芽の初期段階に限られ、種子と胞子それぞれの発芽の関係が環境条件とともに感染に大きく影響する。芽が地表に現れるまでの地温が10℃の時が感染適温とされ、播種期が遅れた場合に多発する場合がある。罹病種子は収穫作業時にコンバインの中でつぶれ、健全種子を汚染するため発生を拡大する。また、罹病穂の胞子塊が土中に落下したり、被害残渣が土中に混入している場合や収穫時のこぼれ種子が圃場に残り、翌年の伝染源となる。なお、近年北海道の小麦で発生している菌種(T. controversa)は土壌伝染が主体で、秋に土壌表面の胞子が発芽し積雪下で感染する。
健全種子を用い、登録農薬を用いて種子消毒を行う(北海道で発生している病原菌に対しては効果的な薬剤が異なる場合がある)。圃場での発病を確認したら、収穫前に罹病株を処分する。翌年の発生を助長するので、罹病株のすき込みは行わない。こぼれ種子が圃場に残り伝染源となるので、田畑転換できる圃場は水田にし、土壌中の胞子とともに種子を死滅させる。畑麦の場合、他作物を栽培して発生した異株を除去して駆逐する。発病が認められた圃場の収穫作業は他の圃場が終了してから行う。また、発病圃場の作業後は、コンバインや乾燥施設などの清掃を徹底する。共同で利用する乾燥施設には、発病圃場で収穫した種子をもち込まない。なお、北海道で発生している病原菌に対しては10月下旬から11月中旬の茎葉散布が有効である。
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