2015-11-09 最終更新
病徴:
萌芽した葉はやや黄化して小さく,成長しないままに留まる.葉柄は伸びず,てんぐ巣症状を呈する.株全体の生育も不良で,徐々に衰退し,枯れる.カナダから輸入された品種(一代交配種Syringa×Prestoniae cojaga)の芽を日本で台木(イボタノキ)に接いだ後に萌芽した葉ではじめて病徴が認められた.
病原:
Phytoplasmaの1種.
細胞壁を欠く難培養性原核生物であるファイトプラズマの1種.培養できないため種は確立していないが16S rRNAの配列に基づいた暫定種が提案されている.本病は,ライラック品種の芽が罹病し潜伏した状態で輸入されたのちに発病したものとみられ,本来日本にはない病原と思われる.病徴は北アメリカに発生する同種の病害と類似する.検出された16S rRNA の性状は日本に広く発生するヒメフタテンヨコバイ媒介グループ,キマダラヒロヨコバイ媒介グループ,イネ黄萎ファイトプラズマのいずれとも異なり,北アメリカのLilac witches’ broomと同一である可能性が高い.
伝染:
接ぎ木を含む栄養繁殖で伝染する.一般に,ファイトプラズマ病は吸収性口器を持って篩管液を吸汁するヨコバイ科の昆虫で媒介されるが,北アメリカでも本病の媒介昆虫は不明である.輸入された穂木を接いだのちに発病しても,異常株を焼却することによって,他に広がる可能性はない.
参考:
http://ci.nii.ac.jp/els/110002734087.pdf?
id=ART0003024656&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=
&ppv_type=0&lang_sw=&no=1425886217&cp=
(2011.12.12奥田誠一)