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ブドウ斑点細菌病

ぶどうはんてんさいきんびょう

Bacterial spot

2015-07-15 最終更新

病徴:
葉身,小果梗,果粒に発生する.葉には葉脈に囲まれた境界の明瞭な角斑が形成され,はじめは黄白色~淡黄色で水浸状を呈するが,のちに褐色~黒褐色の壊死斑となる.幼果期の小果梗や果粒には長径3~10mm,不整形~楕円形で黒褐色~黒色の壊死斑が形成される.果粒の病斑は古くなると灰褐色で乾いた外観を呈する.

病原:
Xanthomonas arboricola Vauterin,Hoste,Kersters & Swings 1995
グラム陰性,好気性で1本の極べん毛を有する桿菌であり,菌体の大きさは1.8±0.2μm×0.8±0.07μmである.標準寒天培地の平板培養(27℃)において2日目には孤立集落が肉眼で認められるようになり,3日目には直径が1mm,8日目には極大(~3mm)に達する.集落は粘稠であり,黄色,不透明,円形,全縁,中高~やや中高,平滑で湿光を帯びる.水溶性色素は産生しない.運動性,オキシダーゼ活性,カタラーゼ活性,サッカロース培地上における粘質集落の形成,硫化水素の産生,ジャガイモ塊茎腐敗は陽性,パープルミルク培養での酸の産生,40℃での生育,タバコ過敏感反応は陰性となる.16S rDNAに基づく分子系統樹において,X.campestris coreのクラスターに含まれる.gyrBに基づく分子系統解析やrep-PCR解析では,X.arboricolaに属する既知pathovarとともに明瞭な単系統群(X.arboricolaクレード)を形成し,ほかの菌種からは独立する.今のところヨーロッパブドウ(Vitis vinifera)以外に自然感染した例は認められていない.

伝染:
本菌はブドウ樹体上に表生している常在菌と考えられる.葉や果房の組織が軟弱な5~6月頃に,過度の多雨・日照不足が重なると,ボルドー液散布が十分ではない甲斐路やロザリオビアンコのような感受性品種に日和見感染する.

参考:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphytopath/77/1/77_1_7/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphytopath/77/4/77_4_265/_pdf

(2011.11.4 澤田 宏之)

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ブドウ斑点細菌病.葉に発生した斑点症状(澤田宏之)日植病報 77:7-22より転載

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ブドウ斑点細菌病.黄白色~淡黄色の初期病斑.葉表(澤田宏之)日植病報 77:7-22より転載

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ブドウ斑点細菌病.褐色~黒褐色の壊死斑.葉裏(澤田宏之)日植病報 77:7-22より転載

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ブドウ斑点細菌病.発病後期の葉枯れ症状(澤田宏之)日植病報 77:7-22より転載

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ブドウ斑点細菌病.幼果期の小果梗に形成された壊死斑(澤田宏之)日植病報 77:7-22より転載

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ブドウ斑点細菌病.幼果期の果粒に形成された壊死斑(澤田宏之)日植病報 77:7-22より転載

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ブドウ斑点細菌病菌は1本の極べん毛を有する桿菌である.スケールバーは0.5μm(澤田宏之)日植病報 77:7-22より転載