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ヒラタケ軟腐病

なんぷびょう

Bacterial soft rot

2015-07-15 最終更新

病徴:
キノコとして子実体が形成される菌床栽培後期の,高湿度条件下の芽出室よび生育室において,菌傘上に発生する.最初は病斑中心部が暗褐色の小斑点であるが,しだいに汚斑部位が拡大して円形または不整形の病斑となる.子実体の生育は著しく抑制され,菌傘や菌柄にも褐色水浸状の病斑が生じ,進行すると子実体全体が軟化腐敗する.ヒラタケの病勢進展は,エノキタケの場合より比較的遅く,発生頻度も低い傾向にある.

病原:
Erwinia carotovora subsp. carotovora(Jones 1901)Bergey,Harrison,Breed,Hammer & Huntoon 1923
細菌の一種で,桿状,大きさは0.6~0.9×1.8~2.5μm(平均0.7~2.3μm),周毛を有する運動性グラム陰性の嫌気性菌で,PPGA培地上で,円形,平滑,不透明な乳白色~白色の集落を形成する.変法ドリガルスキー培地上で生育し,色素は産生せず,O-FテストはF,36℃で生育し,インドール,H2S,レバン産生はみられず,ゼラチンを溶解し,アルギニン,リジン,グルタミン酸,オルニチンの脱炭酸作用は陰性,5%耐塩性,ペクチナーゼ活性は陽性で,ジャガイモスライスを腐敗させる.Adonitol,Dulcitolを除くほとんどの糖を分解し,酸を産生する.宿主範囲は広い.

伝染:
病原菌は滅菌不十分な鋸屑培地や,培養施設内に混入した土埃中で生存し,菌接種や菌掻き作業中にも侵入する.そして培養後期にあたる高湿度条件下の芽出室や生育室での長期間栽培中に子実体に付着して増殖,発病し,感染拡大する.

(2011.11.22   岡本博)

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ヒラタケ軟腐病(岡本博)