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トダシバ類麦角病

ばっかくびょう

Ergot

2015-07-15 最終更新

病徴:
発生は10月頃から株が枯れるまでみられる.激発した穂では400個以上の微小な黒色の麦角を生じ,完成すると落ちやすく,蜜滴の分泌は目立たない.トダシバ,ケトダシバに発生.

病原:
Claviceps microspora Tanda var.microspora
〔異名C.microcephala(Wallroth)Tulasne,C.purpurea(Fries)Tulasne〕
子のう菌類に属し,分生子と子のう胞子を形成する.分生子は未熟な麦角や伸長した麦角の穎内の基部表面に付着し,小型で無色,単細胞,楕円形~類球形で,大きさ2.2~3.8(~4.9)×(1.3~)2~2.9(~3.2)μmである.麦角は円筒形で両端尖り,長いものは湾曲し,黒紫色か黒色で,大きさ1.5~8(~10.1)×0.4~1.1mm.越冬後の麦角は夏に発芽し,2,3週間で子のう胞子を飛散する.子座は1~2本生じ,柄は直立かねじれ,暗紫色で線状,大きさ(1~)8~15×0.1~0.4mmで,頂端に球形かやや扁球形,柄と同色で濃く,径0.3~1.1(~1.3)mmの子座頭部を形成する.子のう殻は全体が子座内に埋没し,長円形か卵形で口部を突出開口し,大きさ147~214×63~123μmあり,細円筒形で下方が細まる子のうを多数配列する.子のうは大きさ105~147×2.1~3.9μmあり,線状で無色,単細胞で長さ88~133μmの子のう胞子を8本内生する.麦角アルカロイドの在否は研究者で異なる.

伝染:
本病菌の子座発生率は著しく高く,一次伝染源は宿主の開花期に飛散した子のう胞子によるとみられる.蜜滴の分泌は劣り,本来の宿主以外にはほとんど病原性を欠き,二次伝染は低いようである.

(2012.3.27 丹田誠之助)

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トダシバ類麦角病.病穂(丹田誠之助)

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トダシバ類麦角病菌.子座(丹田誠之助)

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トダシバ類麦角病菌(丹田誠之助) 1:病穂,2:麦角,3:種子,4:子座,5:子座の縦断面,6:子のう殻,7:子のう胞子,8:分生子,9:平板培養菌叢,10:斜面培養菌叢