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トウガラシ・ピーマンモザイク病(かすり状えそ病)

Mosaic(Scratched-like necrosis disease)

2015-07-15 最終更新

病徴:
感染ピーマンの葉に淡いモザイクや退緑,かすり状のえそを伴う症状が発生する.初期症状はうどんこ病に類似した退緑斑が葉身に現れるが,病勢が進行するとともにかすり状のえそ症状が現れ,落葉や落果が激しくなる.発病後期には茎えそが生じ,重症の場合には枝が折れることがある.

病原:
タバコマイルドグリーンモザイクウイルス Tobacco mild green mosaic virus(TMGMV)
TMGVMは,約6,300塩基の1本鎖RNAをゲノムとし,それに約2,100個の同一の外被タンパク質(約18kDa)がらせん状にまとわりついた棒状粒子を形成するトバモウイルスの一種である.ウイルス粒子は,長さ約300 nm,直径約18 nmで,透過型電子顕微鏡で観察できる.ゲノムRNA上には,ほかのトバモウイルスと同様に,二種類のRNA依存型RNA複製酵素(130kDa,180kDa),細胞間移行タンパク質(30kDa),外被タンパク質がコードされている.不活化温度は85℃10分,希釈限界は10-7とされている.宿主範囲は広く,多くのナス科,一部のアカザ科,キク科,イワタバコ科およびセリ科の植物に感染する.

伝染:
TMGMVに罹病した植物から採取した種子により垂直伝染が起こる.本ウイルスは罹病植物残渣の中で安定的に残存し,次作の定植苗の土壌伝染源となる.また,本ウイルスは感染力が強いため,作物の栽培管理に用いる器具類に付着する汁液により隣接株へ容易に接触伝染をする.媒介生物は知られていない.
なお,本ウイルス病はかすり状えそ病として報告されたが,日本植物病名目録第2版ではトウガラシ・ピーマンモザイク病として整理されている.
(2011年6月1日版; http://www.ppsj.org/pdf/mokuroku-tsuiroku110601.pdf

参考:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kapps/52/0/52_0_153/_pdf

(2011.11.7 津田新哉)

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トウガラシ・ピーマンモザイク病.ピーマンのかすり状えそ症状(津田新哉)