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チューリップ条斑病

じょうはんびょう

2015-07-15 最終更新

病徴:
葉に黄色~退緑色の条斑が葉脈に沿って生じる,この病徴は萌芽時から観察され,重症株では株全体が萎縮するが,軽症株は開花期に長さ数cmの条斑が1葉あたり数個生じるのみで,健全株との生育の差は認められない.ウイルスに感染した当年はほとんどの株は無病徴であり,これより収穫した球根を植えつけた翌春になってはじめて発病する(球根伝染による).

病原:
チューリップ条斑ウイルスTulip streak virus(TuSV:仮称)
本ウイルスはTenuivirusに類似した不定形ないし環状のひも状粒子で,不安定なためにウイルスの精製・純化が難しいウイルスである.本ウイルスの外被タンパク質(CP)の分子量は約30 kDaで,そのCP遺伝子領域の配列から,新しい種類のマイナス鎖RNAウイルスの一種であることが示唆されている.汁液接種によりタバコほか数種検定植物に全身感染するが,耐保存性は30分以内(20℃)と低く,汁液中の感染性は容易に消失する.

伝染:
病原ウイルスは球根で伝染するとともに,ツボカビの一種であるOlpidium virulentusによって媒介される.O.virulentusは国内の耕地土壌に広く生息し,ウイルス感染球根を植えつけることにより,根に寄生した媒介菌がウイルスを保毒し,長期にわたり圃場が汚染される.ウイルス感染球根の移動・流通に伴い,広域的に汚染圃場が拡大する.また,農機具などによる汚染土壌の移動も重要な伝染経路となっている.なお,接触伝染は確認されていない.

(2011.12.2 守川俊幸)

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チューリップ条斑病.葉に生じた黄色~退緑色の条斑(守川俊幸)

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チューリップ条斑病(守川俊幸)