病害虫・雑草の情報基地

最新情報 植物病害

スモモ枝枯病

えだがれびょう

Shoot blight

2018-10-12 最終更新

病徴:
枝に枝枯れ症状や樹脂の溢出,裂皮がみられる.枝枯れ症状は1年生枝に多くみられ,外観上病斑は認められない.2年生以上の枝には樹脂の溢出,裂皮がみられる.枝枯れ症状を示す枝基部の木質部は褐変する.

病原:
Dothiorella sp.
子のう菌類.分生子殻は枝の表皮下に単生して頂部に孔口が観察され,病斑上での大きさは平均で高さ139μm,幅178μmである.分生子殻内には短い分生子柄が並列し,分生子を単生する.分生子は通常,紡錘形~楕円形で無色,ほとんどの場合単細胞で,大きさは平均で長径26.6μm,短径7.6μmである.PSA培地(25℃)における菌叢の形状は,疎で灰白色~灰色,古くなると黒色で気中菌糸に富む.接種枝に形成された子のうは,子のう殻の底部から開口部に向かい大型,幅広い棍棒状で二重壁,8胞子を不整2列に含む.子のう胞子は無色,単細胞,楕円形~広楕円形で大きさは10.1~15.2×22.8~32.9 μmである.これらの形態から,本菌の完全世代はBotryosphaeria 属菌と考えられる.なお,本菌同定当時のDothiorella 属菌は,その基準標本の再調査の結果、Fusicoccum aescuri Cordaとされている.また近年、Fusicoccum sp. とされていた分離菌がNeofusicoccum属菌に再同定されている例がある.

伝染:
本病は1997年,岡山県北部のヨーロッパスモモ(プルーン)で確認され,天水で灌水している圃場で多発していた.本病原菌は,樹勢の低下したプルーン枝に,凍害や芽を含む表皮組織の傷や枯死部などから侵入,感染した後,ゆっくりと進展して広がり(枝内部の褐変),新梢への養分供給を断つことによって枝枯れを発生させると考えられる.

(2017.9.12 谷名光治)

植物病名データベースへのリンク

写真をクリックすると拡大します

閉じる

スモモ枝枯病(谷名光治)