2015-07-15 最終更新
病徴:
サツマイモの苗生産水耕栽培では,高温時に挿した苗の基部が飴色に軟化し,のちにその上部まで黒変して萎凋,枯死することが多い.本圃では,まだ塊根が小さい時期には地上部のつるの表面が黒褐色に変色して軟腐症状を呈するが,塊根は健全である.その後つるの上部は萎凋,枯死するものも見られる.収穫期ごろになるとつるの地際部は肥大,黒変し,塊根はほぼ正常に肥大した後に腐敗することが多く,成り口の方から腐敗する.通常は,収穫時に塊根を掘り上げてから本病の発病に気付くことが多い.
病原:
Erwinia chrysanthemi Burkholder,McFadden & Dimock 1953
本病原細菌はPSA培地上でわずかに淡黄色を帯びた平滑なコロニーをつくる.グラム陰性,通気嫌気性でジャガイモ塊茎を腐敗させ,インドール試験,レシチナーゼ,マロン酸の利用は陽性,トレハロースからの酸の産生は陰性である.
伝染:
水耕液への病原細菌の混入経路は不明であるが,病原細菌は水耕液中に存在し,挿された苗の切断面から侵入するものと考えられる.高温時には苗の基部から軟腐し,発根せずに枯死するものが多いが,枯死にいたらずに発根,生育した親株から苗に伝染し,この保菌苗が本圃に挿苗されてつるや塊根に発病するものと考えられる.
(2011.12.9 田村逸美)