2015-07-15 最終更新
病徴:
発生は各地で6月下旬頃から見られる.葉に灰褐色または茶色~黒褐色で不整形の比較的大きな病斑を形成し,葉柄や茎が軟化して細くくびれる症状を示す.病勢が進行するとクズは濃褐色に枯れ上がる.患部には容易に遊走子のうや卵胞子の形成が認められる.
病原:
Phytophthora sp.
卵菌類に属す.本病菌の形態は,ダイズ茎疫病菌と同様に遊走子のうの乳頭突起は目立たないが,造精器が造卵器に底着性である点がダイズ茎疫病菌とは異なっている.遊走子のうは23.4~46.8×28.6~78.0μmで乳頭突起は±,造卵器は膜平滑で31.2~44.2μm,卵胞子は淡黄色で26.0~33.8μm,造精器は定着性で13.0~18.2×13.0~23.4μmである.本病菌は35℃では生育せず,28℃付近が最適菌糸生育温度で,培地上でも豊富に有性器官を形成する.ダイズ茎疫病菌とクズ疫病菌は,それぞれクズとダイズに無傷接種でも病原性を示し,病徴は酷似している.また,いずれもアズキには病原性がなく,有傷接種によりインゲン,エンドウに対して病原性を示す.分子系統解析の結果から,クズ疫病菌はダイズ茎疫病菌やアズキ茎疫病菌とは異なる単系統群で,新種のPhytophthora属菌と考えられる.
伝染:
卵胞子で越夏,越冬して残存し,好適環境下で卵胞子が発芽して宿主体に侵入するものと考えられる.遊走子のうから放出される遊走子が水中を泳いで分散して伝染する.梅雨期の大雨で急激に発病,まん延する.
(2011.11.29 向畠博行)