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カシ類枝枯細菌病

えだがれさいきんびょう

Bacterial shoot blight

2015-11-09 最終更新

病徴:
主として当年生枝に発生する.当年生の新梢に黒色壊死病斑が発生し,これが拡大して枝を枯らす.黒色壊死病斑の周囲または発生に先立って不明瞭な変色斑や細菌塊の溢出が見られ,また葉柄から主葉脈に沿っては水浸斑が,葉面には水浸斑や白斑・黄斑を伴った黒褐色~黒色壊死斑点を形成することがある.病徴の進展が止まった場合,枝病斑上に亀裂を生じてかいよう状となり,のちに治癒するが,かいよう部分はもろく,枝折れの原因となる.枝枯れが連年続いた激害木では,枝元の主幹部分が膨らんで表面粗造のがんしゅ様となる.

病原菌:
Xanthomonas arboricola
細菌の一種.好気性でグラム反応は陰性,形態は短桿状,大きさ1.0~2.8×0.4~0.8μm,単極毛を有し,芽胞を形成しない.非水溶性黄色色素を生産する.普通栄養寒天培地上で湿光を帯び,淡黄色,円形,平滑,全縁,粘質の集落を形成する.菌株によっては褐色水溶性色素を生産し,その場合,集落の色調は淡黄褐色となる.糖を含む培地上で多量の粘質物を産生する.カゼインの消化,ゼラチンの液化は陽性,硫化水素およびアンモニアを産生するが,インドールは産生しない.硝酸塩を還元しない.唯一のC・N源としてアスパラギンを利用しない.澱粉,エスクリンを加水分解する.栄養素非要求性,カタラーゼ活性陽性,ウレアーゼ活性陰性,キナ酸を代謝する.耐食塩性2~3%,最高生育温度は34~36℃である.
宿主範囲はブナ科コナラ属の日本産カシ・ナラ類とブナ属のブナ,マテバシイ属のシリブカガシ(そのうち,自然宿主はコナラ属のシラカシ,アラカシ,ウバメガシ,ウラジロガシ,イチイガシ,ツクバネガシ,ハナガカシ,コナラ,ナラガシワ,クヌギ).

伝染:
新梢の皮目や新生葉の気孔および枝に生じた傷に,雨水や潅水を通じて水媒伝染する.風当たりの強い立地条件や密植栽培下,梅雨の長雨後や台風の通過後,または,不適切な剪定処理後にまん延しやすい.カシは年に数度芽吹くので,初夏から秋までは新梢から新梢へ感染を繰り返し,特に高温によって,感染と発病は助長される.秋に枝上に発生した病斑はそのまま越冬することがあり,これが翌年の一次感染源となる.本病は九州の一部地域の緑化樹用カシ類の生産現場で樹形悪化や生育不良を起こすとして問題となっていたが,その後,罹病苗木の移動等に伴い,植栽地や他の生産地に被害が拡大し,また自然林のアラカシ等においても被害が散見されるようになった.

参考:
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002734019

(2015.3.10 石原誠)

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カシ類枝枯細菌病.新梢初期病徴(代表的症状)(石原誠)

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カシ類枝枯細菌病.枝病徴(代表的症状)(石原誠)

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カシ類枝枯細菌病.細菌塊(石原誠)

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カシ類枝枯細菌病.葉脈の水浸(石原誠)

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カシ類枝枯細菌病.葉の斑点病徴(石原誠)

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カシ類枝枯細菌病.葉裏の斑点(石原誠)

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カシ類枝枯細菌病.かいよう病徴(石原誠)

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カシ類枝枯細菌病.粗造のこぶ病徴(石原誠)

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カシ類枝枯細菌病.アラカシ自然林の被害(石原誠)

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カシ類枝枯細菌病.イチイガシ造林地の被害(石原誠)

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カシ類枝枯細菌病菌.集落症状(石原誠)

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カシ類枝枯細菌病菌.電顕写真(石原誠)