2015-07-15 最終更新
病徴:
移植後数年から10数年を経た径3~10cm,高さ3~5m程度の若木に発病が多い.生育期から秋口にかけて比較的細い若木では大部分の枝,あるいはやや太い木では幹の片側の枝の葉が萎凋し,やがて枝の先端から枯れ上がり,枯死部はしだいに基部方向におよぶ.ごく若い木では発病数年以内に全体枯死するが,やや太い木ではしばしば幹の片側の枝が枯れ,反対側の枝が生き残る.発病幹あるいは枝を切断してみると道管部に褐変が認められる.ヤマモミジに発生.
病原:
Verticillium dahliae Klebahn
糸状不完全菌類に属する.罹病幹(枝)の褐変道管部組織片を常法にしたがって表面殺菌後PSA平面に移植し,20℃,12時間照明下で培養すると3日ほどで組織片の周囲から乳白色の菌叢が現れる.はじめ乳白色の菌叢は1週間もすると中心部から徐々に黒味を帯び,20日後にはほとんど全体が黒色に変わる.この段階の菌叢には分生子と微小菌核が豊富に形成されている.分生子柄は菌糸から直立して生じ基部の細胞は無色,輪生状にフィアライドを形成して先端から分生子を噴出する.フィアライドの先端に集合した分生子は偽頭状を呈する.分生子は無色,単室,楕円形~円筒形,大きさ5~7×2.5~3.5μm.微小菌核は菌糸細胞の出芽によって生じ,大きさ35~108×22~65μm.
伝染:
代表的土壌伝染性病原菌の一つで,罹病植物の残渣に付随して地中に残された微小菌核や分生子が越冬し翌年の伝染源になる.多犯性で野菜や花卉を中心に宿主範囲が広く,汚染土壌を介して相互に伝染する.我が国では木本植物の被害報告事例は比較的少ない.高木ではヤマモミジとシナノキの発病例が知られている.
(2011.12.20 原田幸雄)