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オオアブラススキ類麦角病

ばっかくびょう

Ergot

2015-07-15 最終更新

病徴:
オオアブラススキは夏から初秋に出穂開花し,発病は9月頃よりはじまる.麦角は10月までに十分発達し,表面には分生子が白粉状に付着,穎外に突出して下垂する.激発すると8%以上の小花に麦角が発生する.

病原:
Claviceps microspora Tanda var.kawatanii Tanda
〔異名C.purpurea(Fries)Tulasne;C.microcephala (Wallroth)Tulasne〕
子のう菌類の一種で,分生子と子のう胞子を形成する.分生子は無色,単細胞で類球形,大きさ2.2~5×1.4~3.2μmである.麦角は棍棒状~円筒形で両端尖り,やや扁平,はじめ分生子が白粉状に付着するがのち降雨で流失し,暗褐色か黒色の地肌を表す.大きさは1.9~13.1×0.8~2.8mmで,麦角アルカロイドは検出されない.子座は7~8月に発生して,1~10本の子座柄を形成し,9月には子のう胞子を飛散する.柄は細円筒形で真直か湾曲または屈曲し,淡紫褐色で大きさ1~16×0.2~1mm,頂端に類球形,暗紫色で,径0.6~2.1mmの頭部を形成する.子のう殻は子座頭部全体に埋生し,楕円形か卵形で口部が尖り,表面に突出する.大きさ182~308×91~200μmあり,細円筒形で大きさ147~242×2.8~4.2μmの子のうを充満する.子のうには8本の無色,線状で単細胞,長さ70~172μmの子のう胞子を内生する.これらの各部特徴はアブラススキ上の麦角病菌にほぼ一致する.国外ではオオアブラススキをC.microcephalaC.purpureaの宿主にすることもあるが詳述はない.

伝染:
初秋に子のう胞子を飛散して一次伝染する.麦角には多量の分生子を付着するが蜜滴の分泌は目立たず,二次伝染源になるかは疑わしい.冷蔵した分生子を翌春に多くのイチゴツナギ亜科植物に接種しても感染の徴候は全くみられない.

(2012.3.27 丹田誠之助)

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オオアブラススキ類麦角病菌(丹田誠之助) 1:病穂,2:麦角,3:種子,4:子座,5:子座の縦断面,6:子のう殻,7:斜面培養菌叢,8:平板培養菌叢,9:分生子

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オオアブラススキ類麦角病菌.平板培養菌叢(丹田誠之助)