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エノキタケ桃色かび立枯病

ももいろかびたちがれびょう

Pink mold damping-off

2015-12-15 最終更新

病徴:
子実体原基および子実体に発生する.症状としては,子実体が病原菌におおわれて軟化する.通常は,Pseudomonas tolaasii Painなどによる黒い水滴を伴った腐敗症状を併発する.
培養中の栽培ビン菌床外観に現れる症状は,菌糸が培地内ではエノキタケ菌糸と共存し不明な場合があるが,一部は拮抗症状となる.菌糸は白色であり,胞子も若い時期は白色のため,エノキタケ菌糸と区別し難く,汚染を見落としやすい.胞子は種菌上やビン口,キャップの裏などに着生することがある.

病原:
Spicellum roseum Nicot & Roquebert
糸状不完全菌類に属する.PDA培地上での菌叢ははじめ白色であるが,しだいに淡桃色となり,粉状を呈する.栄養菌糸は幅2~5μmで枝分かれする.分生子は栄養菌糸から直接分岐した短い枝から生じ,分生子の形状にしたがって,胞子形成部位はしばしば歯牙状あるいはジグザグ状になる.分生子は無色~淡桃色,単細胞,2~3μmの長球形で,分生子形成様式はシンポジオ型である.また,直径が5~8μmの厚壁胞子もしばしば形成される.菌叢は5~35℃で生育し,生育適温は30℃.

伝染:
汚染した種菌による伝染・拡大と分生子の飛散によりまん延すると考えられる.

(2011.11.30 中村公義)

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エノキタケ桃色かび立枯病.子実体発生時に発症した桃色かび立枯れ症状.左上と右上の綿毛状の部分.淡い桃色の分生子が形成され,黒色の水滴が発生する.(中村公義)

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エノキタケ桃色かび立枯病.病原菌におおわれて軟化した子実体(中央)(中村公義)

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エノキタケ桃色かび立枯病.分生子等の形態 A:分生子,B:分生子形成細胞および分生子,C:厚壁胞子(中村公義)

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エノキタケ桃色かび立枯病.病原菌を感染した培養ビン外観.左:種菌接種時に感染(拮抗症状),右:培養工程で感染(外観正常)(中村公義)