2019-01-15 最終更新
病徴:
イネ株の萎縮,葉先のねじれ,葉脈の隆起などがみられる.症状が激しい場合には出穂が遅れ、稔実が抑制されて著しく減収する.葉先のねじれ症状はイネラギットスタント病の症状とよく似ている.ジャポニカ品種でもインディカ品種でもイネ株の萎縮が起こるが,葉先のねじれについてはインディカ品種で顕著にみられるものの,ジャポニカ品種の「ヒノヒカリ」等ではみられない.インディカ品種との交配で育成された飼料イネ品種の一部で被害が大きい.
病原:
イネ南方黒条萎縮ウイルス Southern rice black-streaked dwarf virus (SRBSDV)
Reoviridae科Fijivirus属の二本鎖RNAウイルスである.本ウイルス病は2001年に中国広東省ではじめて確認され,2015年には国際ウイルス命名委員会(ICTV)によって新規ウイルスとして承認された.日本では2010年にイネで初発生が確認された.寄主範囲はイネおよびトウモロコシである.本ウイルスは,発病したイネ体内の葉鞘部に高濃度で存在する.他の部位からもウイルスは検出可能であるが,成長点からは検出されない.
伝染:
セジロウンカ(Sogatella furcifera)によってのみ媒介される.感染植物を吸汁したセジロウンカによって永続的に伝搬される.卵を通じた次世代へのウイルスの伝搬(経卵伝染)はない.セジロウンカは毎年海外から飛来するが,ウイルス保毒虫の飛来量が多いほど,また飛来時期が早いほどイネの発病株率が上昇する.
参考:
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/pub2016_or_later/pamphlet/tech-pamph/072956.html
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/karc/2016/karc16_s04.html
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/karc/2014/karc14_s16.html
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/karc/2013/karc13_s16.html
(2018.1.29 松村正哉)