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イチゴツナギ類萎凋細菌病

いちょうさいきんびょう

Bacterial wilt

2015-07-15 最終更新

病徴:
自然発病した萎凋株は見いだされていないが,スズメノカタビラより分離した本細菌を葉に有傷接種することにより,スズメノカタビラは発病し,萎凋する.分離株の中には,スズメノカタビラに対して激しい萎凋症状を示すグループと,弱い萎凋症状に加えて葉を黄化させるグループが存在する.強い萎凋症状を示すグループでは,接種部位(葉の先端部)がくびれ,濃緑色に変色,急速に接種葉全体に拡大し,やがて株全体が萎凋枯死する.弱い萎凋症状を示すグループでは,接種部位がくびれ,濃緑色に変色,やがて萎凋症状が拡大するが,株全体が萎凋枯死するには至らず,接種後に伸長した葉に黄化症状が観察される.
本細菌を接種したスズメノカタビラの道管からは菌泥の噴出が観察される.

病原:
Xanthomonas translucens pv.poae (Egli & Schmidt 1982)Vauterin,Hoste,Kersters & Swings 1995
〔異名Xanthomonas campestris pv.poae Egri & Schmidt 1982〕
グラム陰性桿菌.寒天培地上で黄色コロニーを形成し,グルコースを好気的にのみ代謝する.硝酸塩還元性,オキシダーゼ活性およびウレアーゼ活性が陰性.硫化水素を産生し,エスクリンを分解する.アラビノース,グルコース,フルクトース,マンノース,ショ糖,トレハロース,セロビオース,グリセリン,アラニンを唯一の炭素源として利用可能.アドニトールを唯一の炭素源として利用できない.
本細菌の培地上での至適生育温度は30~31℃.
スズメノカタビラ,スピナブルーグラスおよびラフブルーグラスに病原性を示すグループ(スズメノカタビラに強い萎凋症状),そしてスズメノカタビラおよびスピナブルーグラスに弱い病原性を示すグループ(スズメノカタビラに弱い萎凋症状と葉の黄化)が存在する.

伝染:
感染植物内に存在する本細菌が,雨水や灌水により流出し,感染源となる.本先菌は,植物の傷より感染する.スズメノカタビラはゴルフ場などの芝地での雑草であるため,芝刈りは本細菌の伝染を助長する.

(2011.11.27 西野友規)

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イチゴツナギ類萎凋細菌病.強い萎凋を示す分離菌接種によるスズメノカタビラ病徴(西野友規)

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イチゴツナギ萎凋細菌病.弱い萎凋と黄化を示す分離菌接種によるスズメノカタビラ病徴(西野友規)