2015-07-15 最終更新
世界の温帯地方に広く分布し,ヨーロッパでは穀類の害虫として知られている.従来極東地域からの記録はなかったが,1988年,北海道北見地方のムギ類で発生が認められた.
形態:
無翅胎生雌虫は体長約2.5mm,細長い紡錘形で体色は淡黄色ないし淡緑色,しばしば背面中央に,やや濃い緑色の縦すじを表す.頭部は触角瘤の発達が弱く,頭部前縁はごく浅いU字状ないしW字状を呈する.触角は体長よりもやや短く,淡色で,第3節以降各節の末端部は黒ずむ.第3節に数個の二次感覚板をもつ.角状管は細長い円筒状で体長の約1/6,淡色で末端がやや黒ずむ.尾片は淡色で細長い舌状,基部寄りで軽くくびれ,10本前後の刺毛を生じる.
加害作物:
【畑作物】コムギ,オオムギ,トウモロコシ
被害と生態:
発生量は多くはないものの,コムギ,エンバク,トウモロコシなどで発生があり,ムギ類では止め葉表面,トウモロコシでは下位葉裏面を好んで寄生する.出穂期が早い作物ほど発生量の少ない傾向が見られ,6月中旬が出穂期であるコムギ類ではいまのところ吸汁害は軽微で,トウモロコシでの発生が多い傾向がある.秋にバラやハマナスで有性世代の発生が観察されており,完全生活環をもつと考えられる.ヨーロッパではバラ属植物を一次寄主,イネ科およびカヤツリグサ科を二次寄主とする完全生活環を経過する一方,二次寄主上のみで生活する不完全生活環型も存在する.吸汁による直接害に加え,オオムギ黄化萎縮ウイルスを媒介することが知られている.
(2011.10.10 宮崎昌久)