2015-07-15 最終更新
多種の農作物や野生植物に寄生する広食性種.日本(本州以南),中国,フィリピン,インドネシア等,東アジアから東南アジアの温帯~熱帯地域にかけて広く分布.沖縄県ではもっともありふれたハダニの種のひとつであり,農作物(主として野菜・果樹類)と野生植物の双方から高い頻度で発見されるが,九州以北ではまれな種であり,農作物の被害事例も少ない.中国南部ではバナナの害虫とされており,オーストラリアのようにバナナの重要害虫として本種の侵入を警戒している国もある.
形態:
雌成虫の体長は約0.5 mm.胴体部全体が赤色を呈し,カンザワハダニのように胴体部先端が白くなることはない.通常,体側にほぼ左右対称の暗色斑をもつため,これが明瞭な個体はナンゴクナミハダニやアシノワハダニと区別できる.個体によっては暗色斑が胴体部全体に拡大し,全身が真っ黒に見えるものもある.雄成虫の胴体部の色彩は,濃淡に多少の変異はあるが,ほぼ全体が鮮やかな赤色である点で特徴的である.挿入器の末端拡張部は,本邦産の同属種の中では最も小さく,先細りである.
加害作物:
【畑作物】インゲンマメ,シカクマメ.
【野菜】スイカ,トウガン,ピーマン,ヘチマ,ナスほか.
【果樹】アテモヤ,ゴレンシ,バナナ,パパイア,バンレイシ,モモ.
被害と生態:
主として葉裏に寄生し,吸汁箇所を白化あるいは黄化させる.沖縄県の宮古島では,収穫後の貯蔵トウガン果実に多発生して被害を及ぼした事例もある.沖縄県では周年発生しており,農作物以外にタイワンクズ(マメ科)やシマグワ(クワ科),エノキグサ(トウダイグサ科)等の野生植物への寄生頻度が高い.いずれも農耕地やその周辺にふつうにみられる植物であり,これらが圃場への侵入源となっている可能性が高い.
(2011.11.29 大野豪)