2015-07-15 最終更新
本種の寄主植物はこれまで国内ではナデシコ科のハコベ類のみが知られていた.本種によるホウレンソウの被害は北海道内において,いずれも低密度の発生ながら2002年厚真町,2008年北見市と異なる地域で認められている.北海道,本州,国外ではヨーロッパ,北アメリカに分布する.
形態:
成虫は体長4.5mm前後で体色は雌では灰黒色,雄は黒色,頭部の額側や頬部は弱く黄色を帯びた銀白色,額帯は赤褐色で,触角は黒色.腿節は暗褐色で脛節は黄褐色~暗褐色.老熟幼虫は体長5mm程度で体色は乳白色.蛹は体長4~5mm程度で濃赤色を呈する.蛹尾端の後気門周辺に顕著な肉状突起をもつ.
ホウレンソウを加害する類似種の内,ハコベハナバエは脚が黒色で,雌は赤褐色の額帯に1対の額帯交叉剛毛,雄は第3,4腹板側縁に長剛毛をもち,蛹尾端の後気門周辺に顕著な肉状突起がある.テンサイモグリハナバエ,アカザモグリハナバエは脚の一部または全体が黄褐色で,蛹尾端の後気門周辺に顕著な肉状突起を生じない.本種は,脚は黒色で蛹尾端の肉状突起が目立つ点ではハコベハナバエに似るが,雌が額帯交叉剛毛を欠き,雄の第3,4腹板には顕著な長剛毛を欠くことでハコベハナバエとの識別が可能である.
加害作物:
【野菜】ホウレンソウ.
被害と生態:
幼虫がホウレンソウの葉に袋状のもぐり痕(潜葉痕)を形成する.症状はハナバエ科の他害虫ハコベハナバエやアカザモグリハナバエ,テンサイモグリハナバエによる被害と類似し,やや黒ずんだ袋状の潜葉痕内部で幼虫が葉肉を加害する.幼虫は老熟後葉から脱出し,土中で蛹化する.
(2011.10.25 岩崎暁生)