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ナンゴクナミハダニ

Tetranychus okinawanus Ehara

ダニ目ハダニ科

2015-07-15 最終更新

多種の農作物や野生植物に寄生する広食性種.1993年に沖縄県から発見され,1995年に新種記載された.沖縄県ではもっともありふれたハダニ種のひとつであり,これまでに調べられた沖縄県内のすべての島から発見されているほか,農作物(主として野菜類)における発生頻度も高い.また,砂浜に自生しているハマアズキ(マメ科)やグンバイヒルガオ(ヒルガオ科)のような海岸性の植物における発生頻度が高い点で,本邦産のハダニ科の中では特異である.現在までに沖縄県の他に台湾とタイから知られているが,主要寄主のハマアズキ等は熱帯~亜熱帯地域に汎世界的に分布するため,調査が進めば本種の分布域はさらに広がると考えられる.

形態:
雌成虫の体長は約0.5 mm,同属他種よりやや大きい.胴体部全体が鮮やかな赤色を呈し,カンザワハダニのように胴体部先端が白くなることはない.跗節先端の爪間体の正中背部に大きな爪状突起がある.雄成虫の前体部と脚は橙色,後体部は同色~赤橙色や濃緑色まで変異に富む.挿入器の末端拡張部の前端は丸みを帯び,後端は鳥の嘴のようにとがる.雌雄成虫ともアシノワハダニに体色が酷似するため,正確な種の識別のためには雌の跗節と雄の挿入器の観察が不可欠である.

加害作物:
【畑作物】インゲンマメ,サツマイモ,シカクマメ,フジマメ.
【野菜】エンサイ,オクラ,サトイモ,シロウリ,トウガン,ナス,ヘチマ,ホソバワダンほか.
【果樹】パッションフルーツ,バナナ,パパイア.
【花卉】コスモス,ダリア,リアトリス.

被害と生態:
主として葉裏に寄生し,吸汁箇所を白化あるいは黄化させる.休眠性はなく,沖縄県では周年発生している.内的自然増加率は,これまで調べられたTetranychus属の種の中ではミツユビナミハダニとならんで最も高い.リーフディスクを用いて飼育すると,湿らせたスポンジを乗り越えて脱走することがしばしばある.上述の海岸性植物のほか,イヌビユ類(ヒユ科),イヌホオズキ類(ナス科),センダングサ類(キク科)といった帰化植物への寄生頻度も高い.海岸と圃場が隣接することはまれであるため,これら帰化雑草が圃場への直接の侵入源となっている可能性がある.
(2011.11.29 大野豪)

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ナンゴクナミハダニ雌成虫(大野豪)

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第三静止期の雌をガードするナンゴクナミハダニ雄成虫(大野豪)

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切り戻したナスの茎上に群らがるナンゴクナミハダニ雌成虫(大野豪)

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サヤインゲンの被害(ミヤラナミハダニとの同時発生)(安藤緑樹)

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海岸沿いの生息環境(大野豪)