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ナミハダニモドキ

Tetranychus pueraricola Ehara & Gotoh

ダニ目ハダニ科

2015-07-15 最終更新

1996年に新種記載された.マメ科植物を好み,全国に広く分布する.
クズの葉裏に生息して茶褐色の食害痕を出し,とくに晩夏以降にクズ群落一面を褐変させるハダニ.クズ葉上に発生する「赤ダニ」の75~95%は本種である.近縁種のナミハダニ(赤色型)とは生殖的に隔離し,かつ休眠性をもつ.

形態:
雌成虫の体長は約0.5mm.赤色であるが前胴体部先端は白色.雄成虫は約0.4mmで淡黄緑色.第3静止期と成虫化直後の個体が赤みを帯びる点で,第3静止期と成虫化直後が白色である近縁のナミハダニ(赤色型)と異なる.同定は雄の挿入器末端の拡張部の径によって行い,約2.1μm.ナミハダニは約2.6μm.成虫態で休眠し,休眠雌は淡橙色.

加害作物:
【畑作物】インゲンマメ,ダイズ

被害と生態:
寄生された作物の葉は顕著に褐変するが,カンザワハダニにも食害痕を褐変させる系統(単一遺伝子座支配で,白色痕に対して優性)がいるので,食害痕での識別はできない.発生は作物の植栽時期に影響を受けるが,ダイズでは6月中旬から発生しはじめ,8月または10月にピークが見られる.クズでは5月上旬から発生が見られ,6月と9月,稀に10~11月に発生のピークを示す.本種の作物への発生は,圃場付近のクズなどに寄生している移入個体に依存すると考えられるが,作物における生態の詳細は不明である.
(2011.11.10    後藤哲雄)

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ナミハダニモドキ雌成虫と雄成虫(後藤哲雄)

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ナミハダニモドキ休眠雌(後藤哲雄)

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インゲンマメの被害(後藤哲雄)

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クズの被害(後藤哲雄)