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デイゴヒメコバチ

Quadrastichus erythrinae Kim

ハチ目ヒメコバチ科

2015-07-15 最終更新

2003年にマダガスカル周辺の小島(モーリシャス,レユニオン),シンガポール等で発見され,翌2004年に新種として記載された.その後,数年の間にインド,中国,台湾,東南アジア,サモア,グアム,ハワイ等のデイゴ属の自生ないしは植栽地で相次いで記録され,近年はアメリカ合衆国フロリダ州にも侵入した.原産地は定かではないがアフリカ南部のデイゴで同様の虫こぶや寄生蜂も発見されていることから,アフリカを原産とする可能性が高い.
日本では2005年5月に,沖縄県の石垣島のデイゴで多数の虫こぶが発見されたのを皮切りに,その後数年で喜界島を含む奄美大島以南の南西諸島のほぼ全域で被害が確認された.学校に植栽された記念樹や天然記念物の樹が加害されて枯死する例もあり,対策に苦慮している.また,ハワイでは固有種のデイゴの一種が大きな被害を受け問題となっている.

形態:
雌成虫は体長約1.4~1.6mmで,体色は暗褐色だが,頭部の大部分,触角,胸部の中央部,脚の大部分は黄褐色を帯びる.雄成虫はやや小さく約1~1.2mm,体色は黄白色で,胸部の前方と後方,腹部の後半分は暗褐色である.一般のヒメコバチ科の種と同様に,本属もまた他の昆虫類の寄生者として知られるが,植食性の虫こぶ形成者は現在のところ本種のみである.

加害作物:
【庭木】デイゴ属(マメ科)樹木.

被害と生態:

雌成虫がデイゴ属Erythrina spp.樹木の新梢の組織に産卵し,孵化幼虫が寄生部位に虫こぶを形成する.虫こぶが多数形成されると,新梢や葉柄,葉脈上のゴールが連なったり,捻れたように変形する.被害新梢は本来の成長が阻害され,伸長も開花もせず,樹全体が枯死に至ることもある.成虫寿命は3~10日程度で,雌成虫の産卵数は少なくとも150以上あると考えられる.一世代にかかる日数は約20日である.利用可能な新葉や新梢があれば,1年中発生可能だと思われる.
(2012.7.5 上地奈美)

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デイゴに産卵中のデイゴヒメコバチ(田仲義弘)

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虫こぶの中のデイゴヒメコバチ幼虫(田仲義弘)

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デイゴヒメコバチ幼虫(田仲義弘)

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デイゴの被害(田仲義弘)