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クロテンオオメンコガ

Opogona sacchari (Bojer)

英名:banana moth

チョウ目ヒロズコガ科

2015-07-15 最終更新

幼虫が多くの植物の木質部などを食害する.日本では1986年の福岡県における植物検疫での発見例が最も古く,その後,本州の新潟以南,四国,九州,沖縄などで発生を繰り返していることが分かってきた.
アフリカの湿潤な熱帯・亜熱帯地域を起源としているが,ここでは重要な害虫ではなかった.スペインのカナリー諸島のバナナで,1920年代に初めて重要な害虫として注目された.1970年代にブラジルや中央アメリカに侵入し,その後ヨーロッパ,アメリカのフロリダ,中国にも侵入した.アジアにおいては,最近では韓国,イスラエルで確認されている.

形態:
成虫は雌の方がやや大きい場合が多く,雄では前翅長7~11 mm,雌では前翅長9~13 mmとなり,静止する時は,翅を屋根型にたたみ,触角を前方に突き出す.終齢幼虫は体長約30 mmに達し,乳白色から透明に近い体色で,体の上には黒褐色の斑点(刺毛基板が黒褐色を呈するため)が目立ち,頭部と尾端が茶褐色となる.

加害作物:
【畑作物】サツマイモ,トウモロコシ
【特用作物】サトウキビ.
【花卉】シンビジウム,チューリップ,デンドロビウム,ベゴニア,ユリ類.
【果樹】パッションフルーツ,バナナなど.
【庭木】アナナス,アロエ,コルディリネ,ストレチア,セローム,ドラセナ,パキラ,フェニックス・ロベレニー,ベンジャミン,ヤシ類,ユッカなど.

被害と生態:
2007年に与論島,沖永良部島,喜界島,奄美大島のサトウキビにおいて発生し,一部では圃場全体が枯れる激甚被害が発生した.ドラセナやユッカなどでは雌成虫は切断面や接木部などに産卵することが多く,孵化した幼虫は木質部が硬い場合は樹皮と木質部の間の師部を食害して成長する.幹径が細いと木質部も含め内部を全て食害する.フェニックス・ロベレニーでは葉の基部に産卵されるため,孵化した幼虫は成長点から食入して芯部を暴食し枯死に至ることがある.ストレチア,コルディリネ,ヤシ類の幼苗では地際部や地下部の根を食害されることにより著しい被害となる.
幼虫は休眠性はとくになく,温室内などでは周年発生し,常に成虫,幼虫が混在して発生する.
植物以外にも,シンビジウムとデンドロビウムを植栽した周囲の培養土や,ニワトリなどの配合飼料を食べ繁殖する.
(2011.9.5 吉松慎一)

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クロテンオオメンコガ成虫(吉松慎一)

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クロテンオオメンコガ幼虫とベンジャミン接ぎ木部の被害(吉松慎一)

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クロテンオオメンコガ中齢幼虫(竹内浩二)

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クロテンオオメンコガ卵塊と孵化幼虫(飼育虫がペーパーに産卵)(竹内浩二)

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クロテンオオメンコガ蛹と繭(竹内浩二)

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クロテンオオメンコガ幼虫とフェニックス・ロベレニーの被害(竹内浩二)

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幼虫によるドラセナの挿穂被害(竹内浩二)

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幼虫によるドラセナの被害(右は樹皮を剥いだところ,樹皮と木質部の間は暴食されていてフラスが詰まる,矢印は成虫が脱出した蛹殻(竹内浩二)

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幼虫の内部食害により,切り口からフラスの出たドラセナ穂枝(竹内浩二)