病害虫・雑草の情報基地

最新情報 農業害虫

クリバネアザミウマ

Hercinothrips femoralis (Reuter)

英名:banded greenhouse thrips

アザミウマ目アザミウマ科

2015-07-15 最終更新

世界の熱帯~温帯地域に広く分布している.国内でも北海道,関東,近畿地方などで発生が確認されていたが,農作物で被害が問題となることはなかった.しかし,2004年ころから静岡県や高知県などで,ナス,ピーマンなどの野菜類,ディフェンバキア,アガパンサスなどの花卉類で被害発生が見られるようになった.寄主範囲は広く,海外ではナス科,キク科,サトイモ科,バラ科,ユリ科など21科の植物で発生が確認されている.

形態:
成虫の体長は1.2~1.5mm.体色は褐色で,頭部は単眼と複眼の間が黄色,前翅も褐色で,基部と先端部が淡色である.頭部中央と前胸背板の網目状刻紋内部に多数の縞模様がある.幼虫の体色は淡黄色~黄色であるが,腹部背面は排泄物が固着して茶褐色に汚れる.尾端部に褐色で球状の排泄物を保持する場合も多い.

加害作物:
【野菜】イチゴ,シシトウ,シソ,トマト,ナス,ピーマン,ミョウガほか.
【果樹】パッションフルーツ.
【花卉】アガパンサス,カーネーション,ガーベラ,カラー,クリスマスローズ,ディフェンバキア,デンドロビウム,ファレノプシス,ポトス,モンステラ,ルスカスほか.

被害と生態:
成虫,幼虫とも葉や果実に寄生し,吸汁加害する.加害によって葉はかすり状やえそ斑となり,ひどい場合は落葉する.また,排泄物によりすす状の汚れが発生し,品質低下を招く.
ピーマンやシシトウでは,下位の葉や茎から被害が発生しはじめ,上位の茎葉へと進展していく.茎葉の食害痕はかすり状で,排泄物で黒点状に汚れる.また,果実は果皮がケロイド状になる.
ミョウガでは硬化した下位葉で発生することが多い.被害部は退緑斑点を生じるとともに,排泄物により黒点状に汚れる.発生が多くなると,上位葉へと被害が進展する.
ガーベラでは花でも食害被害が発生する.
卵~成虫までの発育期間は,24℃で24日といわれている.雄成虫は発見されておらず,雌成虫のみで単為生殖する.
(2012.1.16 山下泉)

写真をクリックすると拡大します

閉じる

クリバネアザミウマ成虫(全農教)

閉じる

クリバネアザミウマ1齢幼虫(山下泉)

閉じる

ピーマン果実の吸汁被害(山下泉)

閉じる

シシトウ葉の吸汁被害(山下泉)

閉じる

ミョウガ葉の吸汁被害(山下泉)