2015-07-15 最終更新
トドマツノハダニO.ununguis (Jacobi)には,針葉樹寄生型と広葉樹寄生型が知られていたが,1999年に後者をブナカツメハダニO.gotohi Eharaとして記載し,2型を別種とした.さらにその後の生態学的知見に基づいて,ブナカツメハダニは2007年にブナ科の常緑広葉樹に寄生して産雄単為生殖を営むブナカツメハダニO.gotohi,ブナ科の常緑広葉樹に寄生して産雌単為生殖を営むニョゴツメハダニO.amiensis Ehara & Gotoh,そしてブナ科の落葉広葉樹に寄生して産雄単為生殖を営むクリノツメハダニO.castaneae Ehara & Gotohの3種に分離された.
形態:
雌成虫の体長は約0.5mm.緑色~緑褐色で,加齢に伴って赤みが強くなる.雄成虫も同色で約0.4mm.雌成虫第1脚跗節の二重毛の基部側にある通常毛の数に変異(3~4本)がある.第2脚は3通常毛と1ソレニジオン(感覚毛)をもつ.近縁のニョゴツメハダニは第1脚に3通常毛,第2脚跗節に3通常毛と1ソレニジオンをもつので,本種において3通常毛をもつ個体の同定には注意が必要である.卵態で休眠し,休眠卵産下雌は濃赤色.夏卵は白色,休眠卵は濃赤色.
加害作物:
【果樹】クリ
被害と生態:
越冬卵から孵化した個体は葉裏に寄生するが,成虫化後は葉表に移動し,おもに主脈沿いにシェルター状の巣網を張ってその中に生息する.寄生された脈沿いに白~黄色の食害痕が現れ,やがて褐変する.関東地方のクリでは,4月中下旬から発生しはじめ,7月または9月にピークが見られる.休眠卵産下雌は8月上旬から出現し,10月上旬にはすべての雌が休眠卵産下個体となり,休眠卵を枝の分岐部や葉芽付近に産む.
(2011.11.10 後藤哲雄)