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キタムギハモグリバエ

Chromatomyia fuscula (Zetterstedt)

英名:cereal leaf miner

ハエ目ハモグリバエ科

2015-07-15 最終更新

イネ科植物の葉に潜孔寄生する.現在まで北海道でのみ発生が確認されており,本州で発生しているムギスジハモグリバエと酷似する.北海道,ヨーロッパ,カナダに分布する.

形態:
成虫は体長約2mm,頭部はくすんだ乳白色で触角は黒色.胸部,腹部は全体に灰黒色.脚は黒色で,腿節末端はわずかに黄白色を呈する.幼虫は乳白色のウジで,老熟すると体長約3mm.蛹は淡褐色長楕円形で弱い扁平,前気門のある前部がやや突出する.
成虫の形状,幼虫の加害方法ともに麦類害虫の近縁種ムギスジハモグリバエに酷似するが,複眼上に生じる微毛がムギスジハモグリバエでは個眼の数とほぼ同程度に密生するのに対し,本種では個眼の数の1/2以下でまばらである.

加害作物:
【畑作物】オオムギ,コムギ.
【牧草・飼料作物】ケンタッキーブルーグラス,チモシー.

被害と生態:
幼虫はムギ類やイネ科牧草の葉肉内を線状に潜孔する.糞粒は点々と潜葉痕の中に残される.老熟すると,潜孔末端の葉内で,前気門を表皮から外に突出させて蛹化する.北海道の発生地では春季に4月中下旬から成虫が出現し,5月中に幼虫による被害が認められた後,第1世代成虫は6月中旬から7月上旬にかけて認められる.しかし当該世代によるイネ科植物への産卵や寄生は認められず,7月中旬以降,成虫も見られなくなる.同様の発生経過をたどるノルウエーでの調査結果から,本種はハモグリバエとしては例外的な成虫越冬種で,第1世代成虫は初夏以降翌年春まで地際などに潜んでいるものとされている.北海道における発生経過もこの知見と矛盾せず,本種は北海道でも年1世代で成虫越冬している可能性がある.
(2011.10.25 岩崎暁生)

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キタムギハモグリバエ成虫(岩崎暁生)

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キタムギハモグリバエの潜葉痕(岩崎暁生)