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ムラサキアツバ

Diomea cremata (Butler)

チョウ目ヤガ科

2015-07-15 最終更新

以前は,野生のシュタケやシハイタケ等の多孔菌科のキノコ類を食べることが報告されていたが,栽培キノコの害虫としては認識されていなかった.国内では,北海道,本州,四国,九州,対馬,国外では朝鮮半島,ロシア南東部に分布する.

形態:

成虫の開張は28~30 mmで,翅は黒褐色で,紫色を帯びている.成虫が生きている間は翅の紫色は明瞭だが,標本として長期に保管されていると紫色は退色して見えなくなる.老熟幼虫は体長約30mmで,第3,4腹節に腹脚を欠き,シャクトリムシ状の歩行をする.腹部背方に隆起があり,とくに第8節で目立つ.幼虫の体色は紫褐色の地に不規則な屈曲した白線が縦走して複雑な斑紋を呈し,また,体色の変異は大きい.

加害作物:
【野菜】シイタケ

被害と生態:
成虫は5~9月の間に少なくとも年2回出現し,蛹で越冬する.
幼虫は菌床表面に形成された菌糸体による褐色の皮膜をかじり取って食害するので,新しい食害部は図の様に白色となって目立つ.子実体原基は褐色の皮膜下に形成されるため,菌床が多数の幼虫により加害されると子実体の発生が減少し,また食害部は病原菌の侵入口となる.
北海道では,ビニルハウス内で原木栽培されたシイタケに被害があった.主要収穫期の子実体では被害が少なく,その収穫期から1か月程度を経過したころの二次的に出芽した子実体に被害が多かった.他地域では原木栽培での発生はほとんど報告がない.
(2011.9.5 吉松慎一)

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ムラサキアツバ成虫(岩崎暁生)

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ムラサキアツバ幼虫とシイタケ菌床の被害(仲田幸樹)

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ムラサキアツバ幼虫と原木栽培のシイタケ子実体の被害(岩崎暁生)