2015-07-15 最終更新
形態的に近似する他種と混同され,国内での発生が見過ごされてきた経緯があるが,1992年に栃木県のソラマメで,1993年には北海道のテンサイで,また2001年には大阪府のソラマメで,「Aphis fabae」として発生が確認・報告された.ヨーロッパ原産と考えられているが,現在は日本国内および世界各地の温帯地方に広く分布する.
形態:
無翅胎生雌虫は体長約1.5~2.5mm,卵形で黒褐色ないし鈍黒色,金属光沢はない.触角は体より短く二次感覚板を欠く.第1,2節は黒色,鞭状部が乳白色で先端部(第5節先半部以降)が黒ずむ.脚は脛節が乳白色で末端が黒ずむ.脛節の刺毛は毛状で,脛節の太さよりも長い.角状管は黒色,円筒状で長さは幅の3~8倍.尾片は黒色,長さは角状管の0.6~1.3倍,11~27本の刺毛を有する.角状管より前方の腹部背面には,マメアブラムシやギシギシアブラムシに見られるような暗色のキチン板をもたない.
加害作物:
【畑作物】ソラマメ
【野菜】ホウレンソウ
【特用作物】テンサイ
【庭木】ニシキギ,マユミ,ユッカ
被害と生態:
ヨーロッパではマユミ属を一次寄主とする完全生活環をもち,マメ科,アカザ科,ケシ科など,多くの二次寄主が記録されている.日本でもマユミ属での発生が知られ,一方北海道のテンサイや本州のソラマメでは,周年二次寄主上で生活を継続する不完全生活環型の存在が確認されている.日本における二次寄主としては,ソラマメ,テンサイのほかホウレンソウ,ユッカ,ギシギシ属,ハナウド属,アザミ属など,多岐にわたる植物が記録されている.本種は多くの植物ウイルスの媒介虫として知られており,日本でも関西以西のダイズ矮化病の病原であるレンゲ萎縮ウイルスの媒介が確認されている.
(2011.10.10 宮崎昌久)