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ヨシ類麦角病

ばっかくびょう

Ergot

2015-12-15 最終更新

病徴:
麦角の発生は晩秋にみられ,冬季も枯れた穂に残る.ヨシ類の穂は花数が多く,麦角は小型で見落とされやすいが,黒色で包穎と白毛より伸長し,激発した穂には500個以上発生する.ヨシ,セイタカヨシ,ツルヨシに発生する.

病原:
Claviceps microcephala(Wallroth)Tulasne
〔異名Claviceps purpurea(Fries)Tulasne〕
子のう菌類の一種で,分生子と子のう胞子を形成する.未熟麦角に着生した分生子は無色,単細胞,楕円形か卵形で,大きさ3.5~11.6×1.9~5.6μm.麦角の外形は3宿主間で類似し,細円筒形で先端尖り,真直か湾曲し,ほぼ黒色で,大きさは2.1~14.3×0.2~1.2mmである.ヨシ類麦角のアルカロイド含量は高く,種類も多い.ヨシ上の麦角は8~9月に発芽し1~8本の子座を生じる.子座柄は細円筒形か線状で多くは湾曲し,赤橙色か淡赤色で,大きさ0.3~5.3×0.2~0.9mm,頂端に球形か扁球形で赤褐色か帯紫赤色の頭部を形成する.頭部の径は0.6~1.8mmで子のう殻口を点在して粗面を呈する.子のう殻は楕円形か卵形で口部が尖り,大きさ123~305×70~179μmで細円筒形の子のうを充満する.子のうは大きさ74~165×1.8~4.2μmで,8本の線状,無色,単細胞で,長さ42~147μmの子のう胞子を内生する.国外ではヨシ類の麦角病菌をC.purpureaのシノニムとすることもある.

伝染:
麦角は初秋に子座を生じ,ヨシ類の開花期に子のう胞子を飛散して風媒感染するが罹病花にはほとんど蜜滴の分泌がみられない.翌春まで冷蔵した麦角の分生子を人為的にイチゴツナギ亜科植物に接種すると多数の種に感染して多くの蜜滴を生産するが,麦角の十分な発達は認められない.同亜科植物の多くは春~初夏に開花するので子のう胞子や分生子による自然感染の機会はほとんど考えられない.

(2012.3.27 丹田誠之助)

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ヨシ類麦角病.罹病穂(丹田誠之助)

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ヨシ類麦角病菌.平板培養菌叢(丹田誠之助)

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ヨシ類麦角病菌(丹田誠之助) ヨシ 1:病穂,2:麦角,3:種子,5:分生子,6:子座,7:子座の縦断面,8:子のう殻,9:平板培養菌叢,10:斜面培養菌叢 セイタカヨシ 4:麦角