クロキ白藻病

しろもびょう

Algal leaf spot

2015-07-15 最終更新

病徴：
3種の藻が生じるが病原藻(1)の発生が普遍的，(2)も場所により多発して，同一葉に(1)と混在する．病原藻(1)による藻体はおもに葉表に生じるが，葉裏に生じることがあり，新梢にも生じる．葉上の藻体はほぼ円形，糸状体が房になって放射状に拡大するが房間に割目が生じて縁辺は分かれ，最大径は15～18 mm，縁辺は淡緑色，中心部は褐色～紫色．新梢上の藻体は楕円形，3～8×1～3 mm．藻体周囲の葉・新梢組織が紫色に変色する．春～夏期，配偶子のう群が藻体表面に粒状に隆起する．また，遊走子のう柄が立ち上がり，先端に微細な粒状，橙色の遊走子のうが房状に形成される．古い病斑では中心部が脱落するか白色化し，周囲に新藻体が生じて輪状を呈する．病原藻(2)による藻体は3年生以上の古い葉の葉表に生じる．藻体は円形，糸状体は全面房状に拡大して全縁，最大径3～5 mm，灰緑色．春期，配偶子のう群が藻体の表面に輪状の帯となって隆起する．遊走子のう柄・遊走子のうの形成はきわめてまれである．古い藻体では中心部が破壊して脱落する．病原藻(3)についてはタブノキ白藻病の項を参照．

病原：
(1) Cephaleuros japonicus Y.Suto & S.Ohtani
(2) Cephaleuros microcellularis Y.Suto & S.Ohtani
(3) Cephaleuros virescens Kunze
緑藻，スミレモ科に属する．
(1)の藻体は角皮下に拡大して，表皮と柵状組織の細胞が褐色に壊死する．糸状体は不規則に分枝して，中心部ではたがいに横方向に密着して偽柔組織をつくるが，縁辺部では分離して成長する．配偶子のうは球形～楕円体．遊走子のう柄は長さ190～350μm，藻体に埋まった基部細胞が球根状に膨らむ．先端の頭部細胞から4～6個の支持細胞が湾曲して生じて，これに楕円体の遊走子のうが各1個形成される．配偶子と遊走子は楕円体～紡錘体，前者は6～9×3.7～5μm，後者は8～10.8×4～6μm，頭部に2本のべん毛を持ち水中で活発に遊泳する．
(2)の藻体は角皮下に拡大して，表皮と柵状組織の細胞が褐色に壊死する．糸状体は規則的に二叉分枝して，たがいに横方向に密着して偽柔組織をつくる．配偶子のうは球形～楕円体．配偶子は楕円体～紡錘体，5～7.5×3～4.5μm，頭部に2本のべん毛をもち水中で活発に遊泳する．
病原藻(3)についてはタブノキ白藻病の項を参照．

伝染：
病原藻(1)と(3)については，春～夏期配偶子のうから放出される配偶子と遊走子のうから放出される遊走子によって，病原藻(2)については，春期，配偶子のうから放出される配偶子によって感染が生じる．

（2011.12.15　周藤靖雄）

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