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スズカケノキ類うどんこ病

Powdery mildew

2015-11-09 最終更新

病徴:
葉,緑枝に発生する.はじめ,新梢先端葉から発病し,樹全体に拡がる.新梢の出葉から展葉中に発病することが多く,発病部位の葉組織が正常に生育できないために,葉脈が変形し,葉が歪んだ形となり,縮れや波打ちを伴う奇形を起こす.展葉とともに葉面が白粉におおわれ,新梢や展開した直後の若葉が発病するとしばしば粉状の白色菌叢が厚く生じる.菌叢が葉裏面に先に発生すると,葉表には菌叢の発達が少なく,葉表の罹病部は黄変する.展開した葉では薄い菌叢が全面に生じ,汚白色となる.奇形葉の厚い菌叢が新梢全面に広がることは少ないが,一方,薄い菌叢はしばしば樹全体に認められる.展葉後に発病しても波打ちや奇形が目立つ.病葉は長く着生しているが,秋季の葉の黄化は罹病葉では不鮮明である.また,落葉は正常葉よりも1ヵ月程度早くはじまる.本病は症状が激しく,景観を著しく損なう.モミジバスズカケノキ,アメリカスズカケノキおよびスズカケノキに発生する.

病原:
Oidium sp.
子のう菌類のうどんこ病菌の一種だが,完全世代(閉子のう殻世代)が確認されておらず,糸状不完全菌類に属す.菌叢は葉の両面に表生し,永続性である.分生子柄は菌糸上に直立し,3~5細胞からなり,長さが85~290μm,分生子を単生する.分生子はフィブロンシン体を欠き,無色,単細胞,卵形~楕円形,大きさ(30~)35~45(~53)×18~26μm,L/W比は1.81~1.94.分生子の発芽管は,先端か途中に比較的複雑なこぶし状の付着器を形成する.丹田(1996)はスズカケノキ類にErysiphe platani Howeを記録しているが完全世代(閉子のう殻世代)は観察していない.

伝染:
第一次伝染源の詳細は不明だが,初発生の状況から罹病した組織の表面あるいは内部で菌が越冬し,発芽とともに感染・発病することが示唆される.生育期には分生子の飛散によりまん延する.

参考:
http://ci.nii.ac.jp/els/110002732964.pdf?
id=ART0003023456&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=
&ppv_type=0&lang_sw=&no=1426688715&cp=

(2012.1.30 堀江博道)

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スズカケノキ類うどんこ病.樹全体が薄く白くなる(堀江博道)

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スズカケノキ類うどんこ病.新梢先端部は激しく罹病する(堀江博道)

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スズカケノキ類うどんこ病.同拡大(堀江博道)

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スズカケノキ類うどんこ病.罹病葉は生育が不均衡となり奇形を起こす(堀江博道)

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スズカケノキ類うどんこ病.葉裏では葉脈を中心に白色粉状の菌体が広がる(堀江博道)