2015-11-09 最終更新
病徴:
クロマメノキ,クロウスゴ,エゾクロウスゴ,およびオオバスノキに発生.萌芽後,展開した葉および枝条に病患部を形成.病患部は著しい変形を起こさない.葉の病徴は円形あるいは全葉面に発生し,患部の葉表は赤色を帯び,子実層は病斑部の葉の裏面に白色粉状に形成される.
病原:
Exobasidium vaccinii-uliginosi Boudier
担子菌類に属す.子実層は担子器からなるが,表皮表面には菌糸が発生しない.担子器は棍棒状から円筒形,先端は鈍頭で2本の小柄を有する.担子器は寄主植物の表皮表面から直接あるいは気孔より出現する.小柄はその頂部に各1個の担子胞子を形成する.担子胞子は無色,平滑,長楕円形から卵形または倒卵形で長径16~20μm,短径 7~8μm,小柄と接続する基部に向かってやや幅が狭まり,斜向する.担子胞子は無隔壁とされる.担子胞子の発芽は発芽管を伸張するタイプ(発芽管型)で,胞子の両端から開始され,その後,隔壁で仕切られた他の細胞より発芽が続く.培養時のコロニーは擬菌糸からなる.分生子の形成は観察されていない.
江塚(1991)はスノキ属シャシャンボに寄生するシャシャンボ平もち病菌が,伊藤(1955)が記載したクロマメノキ粉もち病菌E.vaccinii-uliginosiの担子器と担子胞子に形態が一致するが,従来の海外文献はクロマメノキ粉もち病が全葉面に病徴を表し,伊藤(1955)が記述した「葉の円形病斑」とは異なるので,病徴の一致を見ないとした.筆者が入手した栃木県男体山のクロマメノキ採集標本は伊藤(1955)の第41図aと同様に円形病斑で,裏面に白色粉状の子実層が形成されていた.またシャシャンボ平もち病菌は分生子の形成が認められるが,クロマメノキ粉もち病菌は従来の海外文献を含め,分生子の形成は認められていない.近縁種であると考えられるが,シャシャンボ平もち病菌の種名については,保留されている.
伝染:
病原菌の担子胞子が芽に感染後越冬生存し,翌春萌芽後,展開した葉に発生した病斑が最初の伝染源となると推定される.生育期には病斑上に生じた担子胞子が,風雨により移動し伝染すると考えられる.発病に対する天候の影響は不明である.
参考:
http://ci.nii.ac.jp/naid/40002870049
シャシャンボ平もち病(日本植物病害大事典)
https://boujo.net/admin/byougaijiten/book00_947_byougai.html?type=jiten-byougai08
(2013.4.22 長尾英幸)
(写真なし)