2015-11-09 最終更新
病徴:
ナツハゼおよびクロウスゴに発生する平もち病は,萌芽後,展開した葉に暗色で縁取りされた黄化した円形の病斑を形成.日陰の生育環境では暗色の縁取りが顕著ではない.単一の病斑は直径3~12mmだが,複数の病斑が同時に発生すると大型不定形の病斑,長径5~24μm,短径 3~10mmになる.子実層は病斑部の葉の裏面に形成される.ウスノキに発生する平もち病は,萌芽後,展開した葉にかすかに黄化した円形の病斑を形成.単一の病斑は扁平で,直径2~8mmだが,境界は不明瞭.子実層は病斑部の葉の裏面に形成されるが粉を吹かない.いずれの宿主においても病徴は葉だけに生じる.
病原:
(1) Exobasidium bisporum Sawada ex Ezuka(宿主:ナツハゼおよびクロウスゴ)
(2) E.inconspicuum Nagao & Ezuka(宿主:ウスノキ)
担子菌類に属す.子実層は担子器と分生子からなるが,表皮表面には菌糸が発生しない.担子器は棍棒状から円筒形で,先端は鈍頭で複数の小柄を有する.担子器は宿主植物の表皮表面から直接あるいは気孔より出現する.担子胞子は無色,平滑,長楕円形から倒卵形で,長径14~24(27)μm,短径4~7μm,小柄と接続する基部に向かってやや幅が狭まり,斜向する.担子胞子は担子器上では無隔壁だが,離脱後は複数個の隔壁を生じ,隔壁は担子胞子の発芽時に顕著に観察される.
(1)の担子胞子の発芽は発芽管を伸張するタイプ(発芽管型)で,胞子の両端から開始され,その後隔壁で仕切られた他の細胞より発芽が続く.培養時のコロニーは擬菌糸からなり,分生子を形成する.PDA培地上で培養されたコロニーは分生子だけで構成され,白色で表面に細かい皺(しわ)を多く生じる.
ウスノキに発生する平もち病菌(2)の担子胞子の形態は,宿主範囲を同じくするウスノキ裏白もち病菌E.kishianumに比べ,卵形または倒卵形として観察される.長径9~19μm,短径3.5~6μm.担子胞子の発芽は出芽型で,担子胞子より直接分生子を形成する.分生子は桿菌型,亜紡錘型および棍棒型で長径5~15μm,短径0.4~2μm,その後出芽あるいは擬菌糸を形成する.ウスノキに発生するコロニーの擬菌糸塊は脆く,崩れやすく,培地表面に密着しない.宿主範囲を同じくするスノキ類裏白もち病菌E.kishianumのコロニーの性状とは異なる.
伝染:
病原菌の担子胞子が芽に感染後越冬生存し,翌春萌芽後,展開した葉に発生した病斑が最初の伝染源となると推定される.生育期には病斑上に生じた担子胞子が,風雨により移動し伝染するすると考えられる.発病に対する天候の影響は不明である.
参考:
http://ci.nii.ac.jp/naid/10011769611#cit
http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10267-006-0307-7#page-1
(2013.3.28 長尾英幸)