2015-07-15 最終更新
病徴:
樹幹の樹皮に不規則な縦の亀裂を生じ,そこからはじめ無色透明の樹液を滲出・流下しのち樹液は白色に固結するため,離れたところからも異常がよく認識できる.病患部は治癒組織の形成のため,凸凹となり,中央部はしだいに陥没し,同心円状の永年性がんしゅとなる.環状の突起部に赤色粒状の子のう殻を多数形成し,また淡黄色の分生子粘塊を散生する.
本病は1990年に群馬県で約50年生のシラベの樹幹に発生していたものを,病原性を確認のうえ,新病害として登録され,1995年には神奈川県下のウリカエデでの発生が確認された.
病原:
Neonectria castaneicola(W.Yamamoto.& Oyasu)Tak.Kobayashi & Hirooka
子のう菌類に属する.子のう殻は橙赤色で,5~40個が単生もしくは群生,球形で頂部に嘴状突起はないが,殻壁表面はいぼ状となる.径250~380μm,KOHで暗赤色に,乳酸で黄色に染まる.殻壁は厚さ40~80μmで2層構造.子のうは棍棒状,頂部構造はなく,4個の子のう胞子を1列に含み,50~80×6.5~11μm.子のう胞子は無色ないし黄褐色,幅狭い楕円形ないし紡錘形,中央1隔壁2細胞,隔壁部でくびれず,かすかに縦の条があり,大きさ18~28×6~8.7μm.カーネーションリーフアガー上の不完全世代は,小型分生子を短柄上に擬頭状に形成し,鈍円筒状,0隔壁は大きさ3~15×2.5~5μm,1隔壁は大きさ15~29×5μm.大型分生子は分生子柄上にモノヒアライドに形成され,円筒形(両端鈍円),やや湾曲し,無色で,大きさ63~70×5~7.5μm (3~4隔壁),60~85×5~10μm (5~6隔壁),75~92×5~10μm (7~8隔壁),80~95×7.5~10μm (9隔壁)である.
伝染:
子のう胞子は雨のあと子のう殻の孔口から空中に放出され,風に乗って伝播する(風媒伝染).大型・小型分生子はともに樹皮上の粘塊が雨の飛沫とともに伝播し(雨媒伝染),また昆虫などの小動物の体表に付着して伝播する(虫媒伝染).
(2012.4.5 小林享夫)