2015-07-15 最終更新
病徴:
ヒノキの地際部から目通りにかけて樹幹が異常に肥大し,ちょうど酒を入れる徳利のような形状を呈することから,とっくり病と呼称されている.肥大部の樹皮は大きくめくれあがり,剥げやすく,枯れ枝が付着していることが多い.
異常肥大は,植栽後の比較的早い時期(5,6年生)からその発現が見られ,枝葉の繁茂の盛んな10~20年生頃の若齢期に著しく,それ以降の発現はほとんど見られないことから若齢性の特異的な病徴とされる.発現部位は,異常な肥大成長を示し,年輪幅が1.5cm以上に達することもまれではない.また,肥大部は,往々にして雲紋状のシミがみられ,心材から辺材にわたって変色している場合が多い.
異常肥大の生じた部分は組織面で放射柔細胞の異常な増殖と仮道管走行や形態の乱れ,短縮化等が生じており,著しい材質の劣化を伴う.
病原:
とっくり病と呼称されるも,病原菌は発見されておらず,現在のところ一種の生理障害という見方が強い.
伝染:
伝染によって拡大したという事例はない.適地の誤り,粗放管理等で発生が多発し,高密度管理,枝打ちの実行等の施業面から,また,さし木苗の活用による育種的手法で抑制が可能である.
(2011.12.5 諌本信義)