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セイヨウナシ新梢黒変細菌病

しんしょうこくへんさいきんびょう

Bacterial black shoot

2015-11-10 最終更新

病徴:
枝から伸長した新梢が黒変する.病徴は新梢基部からはじまり,ほとんどの病斑は,新梢基部から約20cm以内に限られるが,激しく発病した新梢では全体の80%程度が黒変する場合がある.新梢病斑部からの葉は,葉柄を通じ葉脈が黒変することもある.本病の病徴は,火傷病やナシ枝枯細菌病の初期症状と区別できないが,それらの典型的な病徴である花や幼果の発病および新梢の先端からの黒変は観察されず,病斑部からの菌泥漏出もほとんど見られない.

病原:
Erwinia uzenensis Matsuura et al.2012
細菌の1種で,周毛を有する桿状細菌である.本細菌は発酵性で,オキシダーゼ活性陰性,ジャガイモ切片を腐敗させないグラム陰性細菌である.普通寒天培地平板での集落の形状は,培養2~3日目で白色,円形,全縁,中高で湿光を帯びた直径1mm程度である.また,しょ糖を添加した培地では多量の粘質物を産生する.本菌の細菌学的性質は,火傷病菌,ナシ枝枯細菌病菌およびE.pyrifoliaeと近縁であることを示すが,DNAハイブリダイゼーションおよび寒天ゲル内二重拡散法による血清型の調査では,これらのいずれにも属さない.本菌による発病はセイヨウナシ樹以外で観察されていない.

伝染:
本病は,2007年の新梢伸長時期にセイヨウナシ栽培1園地で発生したのみであり,伝染経路は明らかでない.しかし,花や幼果の発病および新梢の先端からの黒変は観察されておらず,発生後3年間の栽培園地およびその周囲500m以内のナシ亜科植物の開花期,幼果期および収穫期の肉眼による発生調査で発病は確認されない.さらに発生園地での花器,幼果および収穫果実からの分離で本菌は検出されておらず,接種試験においても,本菌は,火傷病菌,ナシ枝枯細菌病菌およびE.pyrifoliaeと比較して,高濃度の菌を接種した場合のみ,セイヨウナシ新梢を発病させる.以上から,火傷病菌で認められる風雨による二次感染はしないと推察される.なお,本病の発生園地は既に全樹が伐採されている.

参考:
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006383208

(2013.3.9 水野明文)

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セイヨウナシ新梢黒変細菌病(植物防疫所原図)