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モロヘイヤうどんこ病

Powdery mildew

2015-12-15 最終更新

病徴:
2種のうどんこ病菌による病斑はいずれも葉両面,茎,莢に発生し,白色,のち灰色粉状の菌叢を形成し,通常全面をおおう. 晩秋~初冬に茎の菌叢上に閉子のう殻を黒点状に散生または群生する.

病原:
(1) Sphaerotheca fusca(Fries)Blumer
(2) Erysiphe caucasica Simonian var.corchori Tanda
ともに子のう菌類に属し,分生子と子のう胞子を形成する. 分生子柄は病斑上のほふく菌糸体より分岐直立し,真直かゆるく湾曲し,1~4細胞よりなる.
(1)は分生子柄の頂部に分生子を連生し,脚胞は円筒形で34~60×10~12μmである. 分生子は楕円形~卵形,まれに類球形で大小の液胞とフイブロシン体を含み,(25~)28~36×16~21μmである. 閉子のう殻は黒褐色,球形か類球形で,径75~104μmあり,下部に4~8本の付属糸を束生,壁細胞は不規則多角形で,21~57×14~29(~36)μmあり,子のうを単生する. 付属糸は単条で,菌糸状,湾曲か屈曲し,全体が黒褐色か長いものは上方が淡色か無色,1~2(~3)個の隔壁を有し,長さ61~239μm,基部近くの幅が4.7~9.6μmである. 子のうは広卵形か類球形で,無柄,54~79(~86)×(46~)54~61μm,(6~)7~8個の子のう胞子を内生する. 子のう胞子は無色,楕円形か類球形,顆粒状で,14~27×13~18μmである.
(2)は分生子柄の頂部に分生子を単生し,脚胞は円筒形で,22~35×8~10μmである. 分生子は楕円形~卵形,液胞を含むが,フィブロシン体を欠き,27~37(~40)×16~21μmである. 閉子のう殻は黒褐色,球形か類球形,径71~100(~107)μmあり,中央より下部に4~12本の付属糸を輪生し,壁細胞は不規則多角形で,14~25×9~14μmあり,3~4個の子のうを内生する. 付属糸は菌糸状で,単状かしばしば不規則に分岐し湾曲か屈曲,多くはいぼ状の突起を有し無隔壁か1~2(~3)隔壁をそなえ,基部に向かって褐色を呈し,長さ32~236μm,基部近くの幅が6.5~9.6μmである. 子のうは広楕円形,卵形か類球形で,短柄を有するか,まれに無柄,2~4個の子のう胞子を内生し,43~68×25~43μmである.子のう胞子は無色,楕円形~類球形,顆粒状で,13~24×9~14μmである.
(2)の分生子世代は分生子の形成様式とフィブロシン体の在否,脚胞の形態,また完全世代は付属糸の形成状況,壁細胞の大きさ,子のう数と大きさ,子のう胞子数等の差異により容易に(1)と見分けられる.

伝染:
枯死株で越冬した(1)(2)の閉子のう殻は翌春,宿主の生育期に子のう胞子を飛散して一次伝染し,形成した菌叢の分生子で順次二次伝染をくり返す. ウリ科やキク科の植物に発生する S.fusca はモロヘイヤに寄生しないことが接種で確認されている.

(2011.10.11   丹田誠之助)

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モロヘイヤうどんこ病.罹病葉(丹田誠之助)

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