2016-01-29 最終更新
北海道から九州,小笠原諸島,琉球列島,海外では朝鮮半島,中国,熱帯地域に分布することからアジア原産と考えられている.観葉植物や果樹の重要な害虫としても知られているが,日本国内で2005年より本州の各地でナシ果実が本種によって穿孔される被害が報告され,2007年以降に琉球列島や小笠原諸島でマンゴーの枝を加害することが報告された.
形態:
サクキクイムシの雌成虫の体長は2.5mm内外.雄は1.6mm内外.短い円筒形.体色は光沢のある赤褐色~暗褐色をしている.前胸背は微細な瓦状片を同心円状に配置し,基方には細かい点刻をそなえる.上翅点列部は不規則な点刻列をそなえ,列間部の点刻と区別できない.斜面部はやや緩く傾斜し,微細な顆粒と剛毛を密にそなえて光沢を欠き,外側方は龍骨状に縁取られる.前脚の基節窩はたがいにやや広く離れる.同所的に発生するナンヨウキクイムシとは翅鞘の点刻は縦に数本の列状に配されており,それぞれの点刻は疎に黄白色の刺毛をそなえることで区別できる.
加害作物:
【果樹】クリ,ナシ,ブドウ,マンゴー.
加害部位は果実(ナシ),枝(クリ,ナシ,ブドウ,マンゴー),幹(クリ,ナシ,ブドウ)
被害と生態:
本種は通常倒木・衰弱木などで繁殖し,健全木には穿孔しないと考えられている.幼虫は母虫が孔道内に培養したアンブロシア菌を食べて育つ.孔道の形成やアンブロシア菌およびその他の菌により木部が腐朽し,樹勢が衰え,枝が枯死することもある.マンゴーでは多数の主枝・亜主枝等への被害が確認されている.食入孔内部からフラス(糞)が長く連なって押し出されるため,そのような症状の枝等があれば被害枝と判断できる.被害部分を削り取って保護剤を塗った部分へも再侵入の跡が見られ,また,剪定後の枯死部分に穿孔痕が認められる.
(2012.4.18 上里卓己・当真嗣尊)