2016-01-29 最終更新
古くからクスノキの害虫として知られていたが,仏事用の供花に用いられるシキミの栽培面積拡大に伴い,1985年に三重県でシキミへの被害がはじめて確認された.その後,本種の被害が関東~九州にかけての栽培地で問題となっている.
形態:
成虫の体長12~15mm.体色は,新成虫が茶褐色,越冬した成虫は黒褐色で,上翅基部と翅端に赤灰色の紋を装う.卵は,短径2mm,長径3mmの楕円形で,産下直後は淡黄色.幼虫は,老熟すると体長約20mmで,胴部は白色で淡黄色を帯び,わずかに短毛がはえる.
加害作物:
【庭木】 クスノキ,シキミ,タブノキ,ヤブニッケイほか.
被害と生態:
成虫が枝や葉柄を食害するため,シキミでは商品価値が低下する.また,幼虫は根元付近に穿孔して形成層などを加害し,加害されると樹皮が小さくめくれ,おがくず状の虫糞が排出される.幼虫の寄生密度が高まるにつれ樹勢が衰弱し,開花・結実や葉の変色などを引き起こし,枯死する場合もある.
神奈川県の調査では,新成虫の発生は6月下旬~12月下旬まで見られる.また,10月以降に羽化した個体は,産下当年に羽化した個体であり,それ以前に羽化した個体は,前年に産下された卵に由来するものと考えられており,2年1回発生と年1回発生が混じった生活環をもつ.成虫はシキミ樹冠内の幹,枝の分岐部や,樹下の落葉下などで越冬する.また,シキミ材内に生息する幼虫・蛹や,羽化後材内にとどまっている新成虫でも越冬する.産卵時期は5・6月~秋にわたり,幼虫は5~13齢を経て蛹化する.成虫休眠は短日で誘導され,臨界日長は25℃では13~14時間の間であり,多くの成虫は2回以上越冬する.
(2011.11.17 鈴木誠)