2015-07-15 最終更新
1999年7月に北海道で成虫が採集され,翌年生息が確認された侵入害虫.イネ科牧草を寄主とし,その葉を食する.ヨーロッパからサハリンまでアジア大陸に広く分布し,北アメリカにも100年ほど前に侵入定着している.我が国への侵入源は北アメリカと推定されている.発生は今のところ,北海道のオホーツク海側内陸部の2町1村とその周辺市町の一部に留まっているが,発生地域では成虫が容易に観察される.
形態:
幼虫の体色は淡緑色で白色と緑色の薄い縦縞がある.頭部は淡緑褐色で内側白色・外側褐色の縦すじが一対ある.終齢幼虫は体長約2.3cm程度,蛹は体長約2cm,成虫は翅の開張2.5~2.9cm程度の小型のチョウ.翅の上面は明るい橙褐色で後翅の周縁部はやや黒ずむ.下面はくすんだ橙褐色.
加害作物:
【牧草・飼料作物】オーチャードグラス(カモガヤ),ケンタッキーブルーグラス(ナガハグサ),チモシー(オオアワガエリ).
被害と生態:
年1世代で,6月末から8月上旬ころに成虫が出現,食草の茎の根もとに産卵した後,そのまま卵態で越冬して,翌春5~6月に幼虫が現れる.幼虫は葉を縦方向に二つ折りにして数か所を糸で綴り合わせた簡単な巣の中に潜み,幼虫が食した葉には葉縁から縦長にえぐり取られたような食痕が残る.食草上で蛹化する.
このような生活史から,6月以降秋まで3回程度刈り取られる牧草地では,牧草の生育に影響が及ぶほど多発生することはなく,むしろ圃場周辺で雑草化している牧草に多く発生が見られる.また,成虫の発生期に茎葉が登熟枯凋して収穫期を迎えるムギ類においては,本種が多発生する可能性は高くないと考えられている.
(2011.10.23. 八谷和彦)