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ウスコカクモンハマキ

Adoxophyes dubia Yasuda

チョウ目ハマキガ科

2015-07-15 最終更新

従来チャノコカクモンハマキ(広義)Adoxophyes sp. として扱われてきた種が,本種 A. dubia とチャノコカクモンハマキ A.honmai の2種に分割された(保田,1998).

形態:
成虫は前翅長7~10mm程度で,チャノコカクモンハマキよりやや大きい.チャノコカクモンハマキに比べて,翅が白っぽく,斑紋が明瞭な傾向があるが,個体変異が大きい.雄成虫の前翅前縁にあるひだ(costal fold)により両種の簡易識別が可能である.本種はチャノコカクモンハマキに比べて前縁ひだが大きく,内側がビロード状の特異な鱗片群で紡錘型に裏打ちされており,ここで区別できる.卵は扁平な楕円形で淡黄色.50~100粒程度の卵塊として産下される.幼虫は,孵化直後は体長1.5mmほどだが,十分成長すると20mm程度になる.頭部と背楯は黄褐色で,体色は緑色.蛹は体長9mm程度で,黄褐色,紡錘形.

加害作物:
【特用作物】チャ.
【果樹】カンキツほか.

被害と生態:
幼虫がチャの新芽や新葉を糸で綴り内部を食害する.成長すると1枚の葉を縦に綴ったり,2~3枚の葉を綴り合わせて加害する.多発すると収量の減収や製茶品質の悪化を招く.カンキツでは,葉が果実と接する場合果実に食入することがある.
本州西南部,四国,九州,琉球列島に分布し,年4~5回発生する.おもに中齢幼虫が捲葉内で越冬するが,温暖な日には葉を食べて成長する.2~4月にかけて蛹化し,4~5月に越冬世代成虫が出現する.成虫は夜行性で灯火にもよく飛来する.卵塊は葉裏に産下され,孵化した幼虫は直ちに分散して食害を開始する.幼虫は成熟すると捲葉中で蛹となる.各発育ステージの所要期間は,チャノコカクモンハマキに比べやや長くなることが知られている.本種は多くの地域でチャノコカクモンハマキと混生するが,ほとんどの茶園や果樹園等ではチャノコカクモンハマキが優占する.ただし,チャノコカクモンハマキが知られていない沖縄の茶園では本種が優占する.本種では2成分からなる性フェロモンが同定されている.この2成分は近縁種であるチャノコカクモンハマキやリンゴコカクモンハマキ A. orana の2主成分と同一であるが,その混合比率は種により異なる.
(2011.10.31 佐藤安志)

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ウスコカクモンハマキ雄成虫(佐藤安志)

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ウスコカクモンハマキ雌成虫(佐藤安志)

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ウスコカクモンハマキ幼虫(佐藤安志)

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ウスコカクモンハマキ巻葉被害(佐藤安志)