2015-07-15 最終更新
鹿児島で採集された標本をもとに記載された(桑山,1908).以前は,南日本の海岸に自生するシャリンバイにのみ発生していたが,昨今はシャリンバイが公園や道路の分離帯などに多量に植栽されるようになって,急激に分布を広げ,さらに1980年代ころから温暖化の影響で分布が北上し,現在では仙台など東北地方にまで及んでいる.
形態:
成虫の全長(翅端まで)は2.5~3.5mm,体は茶褐色から赤褐色で,胸部背面に淡色の縦のすじがある.額錐は太く短く,頭頂と同じ長さかやや短い.ほとんど開かず,先は斜めになる.触角は短く,頭幅の約1.1倍.前翅は褐色で不透明.晩秋に出る秋型は色彩を異にし,体は濃褐色で前翅は透明.終齢幼虫(5齢幼虫)は卵型で平たく,緑がかった黄橙色で,体長は約1.9mm.触角は前翅芽とほぼ同長.
加害植物:
【庭木】シャリンバイ(バラ科)
被害と生態:
成虫,幼虫とも芽や葉から吸汁し,幼虫は新葉の表面や裏に多く,花や果柄に群生することもある.年に2~3回発生し,成虫越冬であるが,幼虫でも越冬する.越冬後の成虫はシャリンバイの新梢に産卵し,5月におびただしい成虫が羽化,分散移動する.秋にまたシャリンバイに戻り,再び数が増え,晩秋に秋型が現れる.幼虫が群生すると,甘露のため葉にすす病が発生し,著しく美観を損ねる.
(2011.11.4 宮武頼夫)