2015-07-15 最終更新
以前は西日本でしか見られなかったが,最近は温暖化の影響で分布が北上したのか,関東地方などでもふつうに見られるようになった.
北アメリカでは,1957年にサンフランシスコで日本からもち込まれたヤツデについているのが発見され,新種として記載された(Jensen,1957).日本のキジラミが,外国で新種として記載されたのは初めてのことである.その後ヤツデは各地で栽培されているが,本種の発生はサンフランシスコ付近のみに止まっているといわれている.
形態:
成虫の全長(翅端まで)は3.6~4.2mm.体は茶褐色で,背面に濃褐色の縦じま模様がある.前翅は透明で,後縁の中央に暗褐色の斑紋がある.触角は長く,頭幅の1.7倍以上.額錐は長く,先の方はやや開き,先端は斜めになっている.終齢幼虫(5齢幼虫)は卵型でやや平たく,淡緑色~緑色で褐色の斑紋があり,体長は約2.3mm.触角は前翅芽の約1.1倍.白い糸状のワックスを分泌する.
加害植物:
【庭木】ヤツデ(ウコギ科)
被害と生態:
成虫,幼虫とも葉に寄生し,おもに葉裏から吸汁するが,成虫は葉表にいることもある.幼虫は葉裏の葉脈に沿って群がって吸汁する傾向があり,ときには花や果柄に群生することもある.年に2~3回発生するようであるが,詳しい生活史は分かっていない.初夏に大量に羽化した成虫は,分散して他の植物へ移動し,真夏にはあまり食樹上では見られない.ふつう成虫が常緑樹で越冬するが,食樹上で幼虫で越冬していることもある.新葉に多数の幼虫が発生すると,葉が茶色になったり,生育不良で縮れたりする.また,通常,多量に分泌された甘露のため,葉にすす病が発生して美観を損ねる.産卵は,芽の包皮の内側や新葉の縁などに行われる.
(2011.11.4 宮武頼夫)