2015-07-15 最終更新
アキニレの葉に虫えいを作るアブラムシとして知られていたが,1981年ころから福岡県でイチゴの根部に寄生することが知られるようになった.西日本から韓国および中国南部に分布する.なお本種には「アキニレワタムシ」の別名がある.
形態:
無翅胎生雌虫は卵形で体長約1.4mm,薄い黄色ないし橙黄色を帯びた乳白色で,頭部はやや黒ずみ,全身に軽く白色粉状のロウ質物をまとう.眼瘤は顕著であるが複眼の発達は悪く,十数個の個眼をもつだけか,欠如する場合もある.触角は短く,体長の1/4を少し超えるくらいで,第5,6節が第3,4節よりも太く,全体として棍棒状の印象を与える.末端節(第6節)の先端突起は短小で,第6節基部の長さの1/3程度.角状管は円環状で,丸い開口部が円形のキチン化した台座に乗っていて,台座には10本前後の刺毛が1列環状に生じている.尾片は円弧状で目立たない.体背面に発達したロウ腺を備え,とくに頭部と体側部のものは大きく,各ロウ腺が小室をドーナツ状に並べた形をしている.
加害作物:
【野菜】イチゴ
被害と生態:
一次寄主植物はアキニレで,幹母が春にアキニレの葉を巻いて虫えいを形成する.これから生じた有翅虫が夏に二次寄主であるイチゴに移住する.イチゴでは根部(細根)に寄生し,親苗を仕立てるポリポットに発生して移植時に発見されることが多い.栽培圃場における大きな被害は,これまでの処観察されていない.秋にイチゴで出現する有翅虫(産性虫)がアキニレに戻り,両性雌と雄を産出し,受精卵(越冬卵)を産む.なお,二次寄主としては他にヤナギが記録されており,ヤナギ幼木の根部に寄生が見られる.また,北海道など北方に自生するハルニレでは,幹母が自ら虫えいを形成することなく,他のワタムシが形成した虫えいを乗っ取る行動を示し,別亜種Eriosoma yangi parasiticum Akimoto (ニレヤドリワタムシ)として区別されている.
(2011.10.10 宮崎昌久)