2015-07-15 最終更新
2008年に沖縄県と広島県,静岡県で最初に確認された南米(アルゼンチン,ブラジルなど)原産の淡水巻き貝で,イネなどを加害する.1980年代前半にスクミリンゴガイ同様に食用として日本に導入され野生化したものと思われる.日本のリンゴガイは大部分がスクミリンゴガイであるが,広範に調査すれば,本種の分布域はさらに広がると思われる.他の東アジア諸国,東南アジア,アメリカ合衆国にも侵入・定着した.
なお科名について,以前はタニシモドキ科(Pilidae)とされていたが,1997年以降リンゴガイ科(Ampullariidae)になった.
形態:
大型の巻き貝で,孵化貝は殻高2mm前後,成長すると80mmに達する.殻の上部(るい層の縫合部)がくぼんで溝状になっており,殻表は黄褐色からオリーブ色で貝殻の形状や外観はスクミリンゴガイに酷似している.スクミリンゴガイに比べて卵のサイズが小さい,殻の色帯が不鮮明な個体が多い,軟体部が黒っぽいなどの特徴があるが,これら形態的特徴に基づく同定は非常に困難である.両種はミトコンドリアDNAの塩基配列情報によって区別することができる.2種のリンゴガイが同所的に生息する例もみられ,雑種の存在が示唆されている.
加害作物:
【イネ】イネ
【野菜】クワイ・ハスなどの水田作物も加害すると思われる.
被害と生態:
雑食性で,さまざまな水草,水田作物を摂食する.イネでは幼苗を食害し苗に損傷を与え,欠株を生じさせる.生育初期のイネほど被害が激しい.稲が生長し茎葉が硬化すると,貝は食害できず稲は被害をうけない.雌貝は夜間に,数十から最高5000個程度の卵を含んだピンク色の卵塊を水上に産卵する.安定的な環境(川や湖沼)では個体群密度は低く抑えられ,農業環境(水田など)では季節的に増減を繰り返す傾向がみられる.これらの特徴はスクミリンゴガイと同様であるが,本種の生態を記載した論文は少ない.原産地では,ラプラタリンゴガイはスクミリンゴガイに比べて,大河や大きな湖などの安定した環境から採集されている.
(2011.10.30 和田節)