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チャトゲコナジラミ

Aleurocanthus camelliae Kanmiya & Kasai

英名:Camellia spiny whitefly

ヨコバイ目コナジラミ科

2015-07-15 最終更新

2004年8月に京都府で最初に確認された侵入害虫で,その後,近畿地方,全国へ分布拡大している.中国でチャやヒサカキを加害するものと同じであると考えられている.チャをはじめとするツバキ科などに寄生して吸汁加害する.

形態:
成虫の体長は0.9~1.3mm,体色は橙黄色であるが,前翅が紫褐色(肉眼では灰色に見える)で不正形の白斑が9か所ある.明治時代に南方から日本に侵入したカンキツ類を加害するミカントゲコナジラミAleurocanthus spiniferus (Quaintance)と混同されていたが,ミカントゲコナジラミの前翅の白斑は7か所しかなく,両者は似ているが遺伝的・形態的および生態的に別種であることが近年明らかになった.
卵は黄色の短いバナナ状で葉裏に立てた状態で産下される.幼虫は定着すると光沢のある黒色の小判状となり,周囲に白色のロウ物質をもち,背面と周囲には多数の刺毛がある.

加害作物:
【特用作物】サンショウ,チャ
【庭木】サカキ,サザンカ,シキミ,ツバキ,ヒサカキなど.

被害と生態:
本種はおもにチャで甚大な被害をもたらす.チャの葉裏に寄生する幼虫が吸汁加害する結果,排泄される甘露がその下にある葉の表に付着して黒色のカビが生じる「すす病」となる.茶樹の下部を中心にすすが厚く葉表を覆い,光合成機能が低下して樹勢が悪化,新芽の生育を抑制する.また,成虫は新芽の葉裏に群生して吸汁加害し,排泄物による複数の白色の汚点を葉裏に残す.一番茶,二番茶の生育~収穫時期が成虫の羽化時期と重なるため,おびただしい数の成虫が乱舞して収穫作業に影響が出ることもある.さらに,雌雄ともに飛翔することから,容易に風や作業者の衣服や収穫機等を介して他の場所へ伝染しやすい.他の加害作物の被害については,すす病の発生等が懸念されるが詳細は不明である.
発育段階は卵,1齢~4齢幼虫,成虫からなり,孵化直後の幼虫は歩行する.日本では年3~4世代を経過するが,本種は亜熱帯起源の昆虫のため,明瞭な休眠性や決まった越冬ステージはなく,12月まで成虫が見られる.
(2011.10.10 小俣良介)

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新芽に集まるチャトゲコナジラミ成虫(小俣良介)

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チャトゲコナジラミ卵と幼虫(1齢と3齢)(小俣良介)

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チャトゲコナジラミ幼虫が多発した葉裏(小俣良介)

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チャトゲコナジラミ幼虫が排泄した甘露に発生したすす病(小俣良介)